第5回:2000年8月第1週
この日は教室に着いたら、CさんとDさんがアンサンブルをやっていた。
まだ完成という感じではなく、途中何度もやり直したりしてはいたのだが、2台のテナー・サックスから生み出される和音がとても美しく、思わず聞き惚れてしまった。私は一人でしっとりと吹く事に憧れていたが「合奏も案外良いかも知れない」などと思ったりした。
特にDさんの出す音色はまろやかで綺麗だ。優しく吹いているように見える。私も本当は優しい音を出したいのだが、私の場合、優しく吹くと音が出ない。とにかく思い切り息を吸い込んで、力一杯吹いて初めて音が鳴るといった有様だ。女子大生のDさんはがっちりした体型をしている訳でもなく、体力もずば抜けてあるような感じは一見しないのだが、涼しい顔をして吹いていた。それ程力を入れている様子もない。練習の賜なんだろうか?
そして、自分のレッスン。Dさんの演奏を見て、自覚した事を指摘されてしまった。「力が入り過ぎ」。「力入れないと音が出ないんですよ~」と訴えつつも、ちょっと力を抜いてみた。と、なぜだか音が出た。「?」自分でも訳がわからない。前は確かに力を入れないと出なかったのに、この日はなぜだか出てしまったのである。狐につままれたような気分。
サックスは本当は音が出やすい楽器であり、どんな吹き方をしてもそれなりには鳴る物だという。以前の私は一つの吹き方でしか音を出す事が出来なかったが、少しずつ音を出せるパターンが増えてきているのかも知れない。先生はそれこそ、どんな吹き方をしても音を鳴らす事が出来るようだった。歯を置いても置かなくても、唇を巻いても巻かなくても。そうやってどんな状況(?)からでも音を出せるようになると、安定してくるんだろうなぁ。
さて、翌週はお盆休み。私が毎回お借りしているサックスもしばらく使わないという事で、なんとお持ち帰りの許可が下りた。「まだ満足に楽器の組立ても手入れも出来ないのに大丈夫かな? 壊したらどうしよう」と一瞬迷ったが、先生も「そう簡単に壊れない。心配しすぎ」とおっしゃるので、ありがたくお借りする事にした。帰り道は「あぁ、このケースの中にサックスが入っているのかぁ」と、嬉しく、何度もニヤけそうになった。
しかし、重い。「こんなの毎週持ち運ぶのは至難の技だなぁ」とちょっと、買う気が萎えてきた。つい2週間程前には買う気になりかけたのだが、他人のマウスピースをくわえるのも馴れたら苦にならなくなってきたし、(他人の物にも関わらず)このサックスにも愛着が沸いて来てしまったのだ。とはいえ、長く続ける場合はやはり自分の物を買うべきだよなぁ。いつまでも借りているわけにもいかないし……。まぁ、購入の事は、次の更新時に考えようと思う。
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