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2004.02.12

思い出を売る男

jiyu2.gif私はアンドリュー・ロイド・ウェーバーのミュージカルが大好きなのですが、中でも特に好きなのが『オペラ座の怪人』です。初めて見たのは1992年の劇団四季版で、その美しいメロディー、派手な仕掛け、そして切ないストーリーの虜となり、とても感動しました。

このミュージカルの主役は、そのタイトル通り「怪人」なのですが、その怪人と対決する美しい青年・ラウル子爵を演じたのが石丸幹二さんだったようです。
「ようです」と曖昧な書き方をしてしまいましたが、実はこの時、ラウルはほとんど私の眼中にありませんでした(^^;)。仮面をかぶらざるをえない程の醜い顔を持ち、皆から忌み嫌われ苦しい思いをしていた怪人に感情移入してしまった私には、裕福で美しく何の苦労もないお坊ちゃまのラウルは「甘いボンボン」としか思えなかったのです。その為、その時はラウル役の役者さんにも全く興味がなく、誰が演じたのか憶えていません。しかし、石丸幹二さんの四季デビューは92年の『オペラ座の怪人』のラウル役だというのです。という事は、ひょーっとしたら、私は石丸さんのラウルを見ているのか???

初めて石丸さんを「石丸幹二さん」と認識しながら生で見たのはそれから6年後の1998年の事。長野五輪の「文化プログラム」での『ソング&バレエ』でした。これに関しては自分のHPの番外の長野五輪のコーナー(http://www.hi-ho.ne.jp/yumei/nagano/ba.htm)にも書いていますが、この時も石丸幹二さんにはまだそれほど興味はなく、「違いのわかる男(ネスカフェ)の人を生で見た」位にしか思いませんでした。「ハンサムな人」とは思っていましたが、なんとなくキザなイメージもあって(だって「違いのわかる男」だなんて)、それ程好きではなかったのです。

そんな私が石丸さんに興味を持ったのは、彼がサックスを吹けると知ったから(^^;)。
某サイトでその音色を聴く事が出来たんですが、かなり上手いんです。そんな彼が『思い出を売る男』というお芝居でサックスを披露するという情報を得たのは、そのしばらく後の事でした。

「観たいなぁ」とは思いつつも、「お金ないし」と諦めかけていました。そんな折(今年のお正月)、NHK衛星で劇団四季の『異国の丘』が放送されました。そこで石丸さんは主演していたのですが、インタビューに答えたり、新しく出来た四季専用劇場・自由劇場の劇場紹介までしていました。自由劇場がいかに素晴らしい劇場かを話している石丸さんはとても素敵で、私の目はすっかりハートに。気付いたら、「あぁ、自由劇場へ行きたい。石丸さんを生で見たい。『思い出を売る男』、やっぱり観たい~!!」と熱望していました。

チケットはすでに売り切れだった為、それから私のヤフー・オークション・チェックの日々が始まりました(^^;)。そして、そんな執念(?)が実り、見事定価割れのチケットをゲットする事が出来たのです。4000円で落札。バンザーイ!!
jiyu.gif

という事で、前置きが長くなってしまいましたが、劇団四季の『思い出を売る男』を観て来ました。
石丸さんがおっしゃっていた通り(笑)、確かに自由劇場はとても素敵な劇場でした。まずエントランスやロビーがとてもお洒落。「これからお芝居を観るんだ」という高揚した気分をさらに盛り上げてくれます。それでいて、いい感じに落ち着ける雰囲気でもある。日常を忘れさせてくれるような空間でした。ただ、客席は窮屈な感じ。前の席との間隔はあまり無いです。まぁ、ステージを近くに感じさせる為の配慮だと思うので、あまり文句は言えないのですが。小劇場という感じですね。客席数は少ない(500位だったかしらん?)ので、「四季の役者さんは遠目でしか見た事がない」という人にはおススメかも知れません。←でもここではミュージカルはやらないみたいですね

石丸さんは、サックスを吹きながら劇場内の通路を歩きながら登場しました。客席のすぐ横を歩くんですよ。しかもその音色が無茶苦茶キレイ。切なくも美しいメロディーで、私は冒頭から泣きそうになってしまいました。
「サックスやオルゴールを使って、人々の思い出を呼び覚ます」というのが彼の役だったのですが、本当に素敵だったなぁ…。「上手な人のサックスは、伴奏がなくても良いものなんだ」と思い知らされました。あんな風に吹けたら、練習も今の何倍も楽しくなりそうです。主人公はサックスで人を勇気付けたり、淋しい思いを紛らわせてあげたりしていましたが、「あんな商売が実在したら、私もやりたい」と思ってしまうような、憧れのスタイルでした。

印象に残っているセリフに「人間、不幸になった時は昔の懐かしい思い出が何よりの生き甲斐」という物がありました。過去が良くても現在が不幸だと、逆に惨めな気分になりそうな気がするし、過去の思い出にばかり浸っているのはどうかと思うけれど、悪い思い出よりは良い思い出が沢山あった方がいいか。で、良い思い出を作る為に、今日を充実させていければ幸せな人生になるのかな?

それにしても石丸さんのサックスが上手すぎるので不思議に思い、帰宅後ネットで色々調べてみました。すると、なんと石丸さんはプロのサックス奏者になる為に東京音大で3年クラシック・サックスを勉強していたそうなのです。上手い筈だ(ちなみに私のサックスの最初の先生と二人目の先生が共に東京音大出身でした)。
その後、東京芸大に転校して声楽を勉強したそうです(ちなみに四季のラウル役を射止めたのは在学中との事)。
なるほど、「クラシック・サックスをやっていました」という感じの上品な音色でした。寂れた裏通り(という設定)には似つかわしくない程凛とした音で、そのミスマッチさがまた心を打ったように思います。

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