歳三の写真
今年最初に読んだ本は『歳三の写真』です。

一冊まるまる小説かと勘違いしていたのですが、タイトル作は全体の三分の一程度の長さの中編です。残りの三分の二は考察というか、研究文というか、つまりノンフィクションでした。
それではそれぞれの感想行ってみます。
◆歳三の写真
この本を手にしたのは、Mini子さんの所に記載されていた「熊に追いかけられる土方」というのをどうしても自分でも読んでみたくなったから。面白かったぁ(笑)。
その後、他のブログもチェックしてみたのですが、読んだ皆さん必ずこの熊事件に触れているようです。「鬼の副長」が熊に追いかけられる図なんて、土方ファンなら絶対興味ありますよね〜。熊と虎はどちらが強いですか? ヌエと人間はどちらが強いですか? あれ、源さんは熊と戦ったんでしたっけ?(一部意味不明ですみません)
しかし、この小説の土方、写真にこだわりまくりですね。
タイトルがタイトルですから、写真が重要な位置を占めていなければおかしな事になってしまいますが、写真一枚撮るのにそんなに能書が必要なのか? 「命を取られる」とか「西洋文化の象徴」とか、当時は畏敬の存在だったとは思うのですが、あの土方にとってもそんなに特別の物だったのかなぁ、いや、土方においてこそ、特別な存在だったのか……?
ラストはびっくりでした。なんだか、西洋文化に翻弄されっぱなしのような……。 自分が新しい双眼鏡を買ってはしゃいでいた事をふと思い出しました(違)。
◆朝涼や人より先へ渡りふね―伊庭八郎の『征西日記』の韜晦について―
「あれ、まだページこんなに残ってるのに、お話終わっちゃった?」と驚き、
「いや、土方さんがこんな死に方しちゃうのは何なので、まだ続いてるの?」なんて思いましたが、全く別の話でした(^^;)。しかも新選組ですらない〜(呆然)。
とはいえ、伊庭八郎に興味はあったので、楽しく読みました。読んでるとお腹が空いてきます(笑)。
◆重い羽織―新選組の誠―
これは新選組の話ですが、歴史のお話というよりも、なんか社会学のテキストのよう。羽織の役割について語っています。ナチスを喩えに出されるのはなんだか……。
◆高台寺残党
これ、思わぬ収穫でした。
新選組ファンならご存知かと思いますが、高台寺残党というのは御陵衛士の生き残りの事で、彼らの多くは後に赤報隊に入っています。なので、ここでは赤報隊についてかなり詳しく述べられているのです。
ちなみに赤報隊一番隊の隊長は相楽総三。
二番隊の隊長が伊東甲子太郎の弟・鈴木三樹三郎でした。

「相楽左之助」というのは架空の人物で、「相楽」の名は相楽総三を慕いその名を貰ったという設定です。相楽に偽官軍の罪を着せて殺した明治政府を恨んだ左之助はグレるのですが(^^;)、その回想シーンは強く心に残りました。
「るろうに剣心ファンに100の質問」に「キャラプロフィールが不鮮明なキャラの中で、詳しく知りたいと思うキャラは?」という質問がありましたが、そこでも「相楽総三」と答えている私。
「漫画だからドラマチックに脚色してそう」と思いつつも、相楽の事をもっと知りたくなったのです。とはいえ新選組本を追いかけるのでいっぱいいっぱいで、相楽まで追いかけられなかったのが現状でした。それが意外にもこんな形で今回読めて、大喜び♪
相楽にも全く非が無かった訳ではない事はわかりましたが、それでもやはり斬首だなんて納得が行かず、気の毒で、本を読みながら涙が出そうでした。鳥羽・伏見の戦いのきっかけを作った一人でもあるから新選組ファンとしては複雑ですが、良かれと思ってした事で逆賊の汚名を着せられ新政府軍によって斬首される所は近藤勇と同じですから、なんだか他人事とは思えませんでした(涙)。新政府って、ホント、色々な人の犠牲の上に成り立っているのですよね〜(しみじみ)。
と、鈴木三樹三郎や篠原泰之進よりも相楽総三重視で読んでしまった私でした。実は、斎藤さんや藤堂平助、伊東甲子太郎、服部武雄抜きの御陵衛士にはそれ程興味が無いのです。
あ、ちなみに『幕末恋華・花柳剣士伝』のせいで「ちょっと気になる人」となった(^^;)富山弥兵衛は、赤報隊には参加してません。
◆「斜」の視線―新選組副長土方歳三の「書体」―
こっ、これは、筆跡鑑定、いや筆跡診断、筆跡心理学? 「書からそこまで色々わかるのですか?」とただただ感心。こじつけではなくて?
あ、そういえば、大学の心理学(一般教養)の授業で遅刻をしたら、前に出て字だか図形だかを書かされた事がありました。その時「怒りが表れている」と言われてしまい、「え〜、怒ってないのに、何言ってるのよ」と口には出さずに怒ったっけ(爆)。
という感じで、文学・歴史学・社会学・心理学(?)と様々な角度から新選組を捉えた、一風変わった面白い一冊でした。
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コメント
「歳三の写真」
源さんは、熊と闘って勝ちましたよ♪
ー土方歳三の「書体」ーに俄然、興味持ちました。
土方さんが書いた手紙の書体は、”繊細で女性的”だという説明書きをどこかで読んだような気がします。
あ、、「新選組!展」だったかなあ〜
投稿: あさぎ | 2008.01.28 17:53
あさぎさん
そして沖田に「じゃあ、大した事ないや」みたいな事を言われたんでしたね>源さんに負けた熊(^^;)
この本には土方さんの書体について、「女手を想わせると評する人もいるが、やはりその線のすずしさは、男のものである」と書いてありました。その直後に「女手と見まちがえるばかりの優雅体」と書いていましたが。
しかし、私にはあの草書体はほとんど読めません。
そもそも書の良し悪しって、さ〜っぱりわからない(情けない…)。
でも、土方さんが書いたと思うと、心魅かれずにはいられません
投稿: YAGI節 | 2008.01.29 01:10
TBありがとうございます
淡々と進む話の中で、熊の話は衝撃的ですよね。皆さん目をつけられてます(笑)
この作者さんのように、土方が写真にこだわりを持っていたのか、割とすんなり受入れたかは気になる所ですよね。私は土方は洋服もすんなり着ているので、この小説ほど悩まなかったんじゃないかなと。
書体研究凄いですよね〜。
発句の一文字や一言二言程度の手紙に、あんなに講釈付けれるなんて。
凄いけど下手するとほんと、細かすぎてこじつけに思えますね(笑)
投稿: Mini子 | 2008.01.29 22:08
Mini子さん、ようやく記事アップ出来ました〜。
予告してから随分時間が経ってしまいましたが
>私は土方は洋服もすんなり着ているので、この小説ほど悩まなかったんじゃないかなと。
やっぱり!?
私も同感です〜。
「むしろノリノリだったのでは?」という気も……。
あ、ノリノリだったら、近藤さんと一緒に、もっと前に撮ってたか(^^;)。
>下手するとほんと、細かすぎてこじつけに思えますね(笑)
やっぱり〜!?(笑)
Mini子さんの記事のおかげで、興味深い本が読めました♪
ありがとうございました。
投稿: YAGI節 | 2008.01.30 00:17
歳三の写真ご覧になったのですね!
この本は他の短編集も秀逸揃いですよね。
私もどれもこれもがお気に入りで、
イバハチ考察という嬉しいオマケ付だし(←結局そこ・笑)、
大好きな本です。
草森氏の高台寺残党を読んで、伊東派に興味を持ったのですが
その後調べようと思ってすっかり忘れていたことを
YAGI節さんの感想を読んで思い出しました(おい)。
久々に読み直したくなってきましたよvv
投稿: Aki_1031 | 2008.02.04 13:51
Akiさん
イバハチさんの乗馬シーン、カッコ良さ気でした〜
彼がグルメだったという事は、Akiさんのブログで知ったのですけど、ホントに食べ物の事が一杯出て来て、楽しいですね♪
伊東派……なんだか薩摩に踊らされていて哀しいです〜。
しかし『篤姫』が楽しくて仕方ない今日この頃、1年間見た後に、薩摩に対してどんな感情を持っているのか、自分の事ながら興味津々です(^^;)。
投稿: YAGI節 | 2008.02.04 19:17