奉納靖國神社夜桜能(第二夜)
昨日、夜桜能を見に靖國神社へ行きました。
まずは境内の遊就館(宝物館)へ。
入館受付時間ギリギリ(閉館30分前)に飛び込んだので、駆け足でざっと見ただけになっちゃいましたが、一度は観ておきたいと思っていたので寄れて良かった~。
明治維新と西南戦争のコーナー目当てで訪れましたが、やっぱり近代の展示がメインですね。幕末物はちょっぴりでした。印象に残ったのは、錦の御旗・彰義隊の隊旗・榎本武揚の軍服あたり。
遊就館は能楽堂の横にあります。
なので、開場前の会場(シャレじゃないよ)の様子が見られました。
左:開場前 右:開場後
一瞬「立ち見で良ければタダで見れちゃうじゃん!」と思ったのですが、遊就館閉館時刻を過ぎると、夜桜能のチケットを持った人しかこのエリアには入れなくなりました。
その後、Akiさんとの待ち合わせ場所、大村益次郎像前へ。
勝手なイメージかも知れませんが、夜桜能は「イベント色が強そう」という先入観があり、一人で行くのはなんとなーく寂しい気がしてました。靖國神社(新政府軍の戦死者を祀ったのが始まり)という場所柄、佐幕派の方をお誘いするのは気が引けますが、長州もお好きなAkiさんなら大丈夫かと声をかけてみた所、快くお付き合い頂けました。Akiさん、ありがとう♪
普段はチケット代をケチる私ですが(爆)、今回はAkiさんのご提案もあり、奮発してSS席を狙ってみたら……なんと最前列が取れちゃいました。わーい
桜は満開。
都内一古いという、趣のある能楽堂と桜のコントラストは美しく、もううっとり。
火入れ式の時はヘリコプターが大きな音を立てて往き来していたので、どうなる事かと心配しましたが、その後は静かになりました。
靖國夜桜能を見に行った事があるという友人は、「よく見えないし、声もあんまり聞こえなかったし、周りの人が喋っていて、気が散って仕方なかった」なんて言っていましたが、今回はそんな事全くなかったなぁ。さすがに最前列で上演中におしゃべりする人はそうそういないか(^^;)。
ちなみにその友人はかなり懲りたようですが、「最前列だったら、観たかったのに~」と言われてしまいました(笑)。
まずは梅若晋矢さんによる舞囃子で『安宅』。
歌舞伎の『勧進帳』も能の『安宅』も観た事ありますが、それでも、あれが弁慶だとは言われなければわからない感じでした。弁慶の装束を着るわけではなく、裃で舞っていたので。
いや~、やっぱり、最前だとよく見えるなぁ。
と、すっかり良い気分ですが、良い事ばかりは続かないらしい……
次の狂言(『鎌腹』)では、お目当ての野村萬斎さんが、ちょこっとしか出なかったのです。途中からは万作さんの一人芝居状態。
狂言では「その場にいない事にはなっているけど、近くに座っている」という事が多いですよね、観客は見て見ぬフリをするみたいな。
が、ホントにハケちゃった~(泣)。万作さんが呼んでも一向に出て来ない……。
夫が「腹を切る」と騒いでいるのに、「どうせ口だけ」とばかりに丸無視を決め込む妻・萬斎。
「いやいや、奥さん、冷たすぎるってば。少しは心配してあげようよ。出て来てあげようよ。っていうか、私達の為に出て来てっ!!(違)」と思いましたが、ダメでした……。
万作さん扮する夫、あの調子じゃ、しょっちゅう「腹切ってやる~」「死んでやる~」と騒ぐ狼少(中高)年なのでしょうね。
あ、「高杉萬斎さんの靖國神社でのパフォーマンス」とお誘いした私こそ、狼少年状態ですか? ごめんなさい……。
しかし、高杉晋作→鞍馬天狗→昭和天皇と演じて行き、靖國神社では狂言を奉納する萬斎さん、とことん勤皇って感じですね(笑)。
せっかくの最前なのに、萬斎さんを堪能出来なかった事は、本当に残念でしたが、万作さんは相変わらずキュートで、楽しい演目でした♪
面白かったのは、「せっかく腹切っても見物人がいなけりゃ犬死にだ」みたいなセリフ。山南さん(新選組)が聞いたら何と言うかな(^_^;)。
休憩を挟み、最後は能『三輪』。シテ(主役)は梅若玄祥さん。
先日『野馬台の詩』でお姿拝見したばかりですが、週に2回も観る事になろうとは。
途中物凄く風が強くなったんですが、まるで玄祥さんが巻き起こしているような錯覚をおぼえて、ちょっと感動しました。「自然の特効さん」が良い仕事をしてくれたという感じ。
『野馬台の詩』のブログ記事で「自分は能の狂言化を求めているわけではないみたい」というような事を書きましたが、「だったら自分はどんな新作能が観たいかなぁ」と考えました。で、思ったのがビジュアル重視能。
大量の花びら散らすとか、雪を降らすとか、炎を出すとか、美しい花(『わが魂は輝く水なり』に出て来たような大木)のセットを置くなどの、目先のハデさや美しさがあれば、能素人も楽しめるのではないかと考えたんです。でも、それは歌舞伎がやっている事。「大衆文化である歌舞伎だからこそ良いのであって、想像力に訴えるような能楽では違うのかなぁ」なんて考えて結局ブログには書きませんでした。
が、今回の夜桜能は私が体感してみたい素敵シチュエーションの幾つかを叶えてくれた感じで嬉しかったです。
更に、「素人お助け最強グッズ」ともいえるイヤホンガイドが夜桜能にはあるんですよね。
歌舞伎でイヤホンガイドを借りると簡単なパンフをくれますが、そこに載っているのを見て知り「能のイヤホンガイドかぁ、聴いてみたいなぁ」と感じたのも、夜桜能に心惹かれた原因の一つです。
というわけで、今回初めて「イヤホンガイドを聴きながら観る能」というのを体験しました。イヤホンガイドがあっても、わからない点多数ありましたが(爆)、眠さは半減するようです。眠くならずに済みました♪
他の会場でも実施して欲しいけれど、能を頻繁に観るようなコアなファンには必要ないのかな?(ちなみに歌舞伎は能以上に頻繁に観ているし、能より数段わかりやすいのにイヤホンガイドが欠かせない私です)
国立能楽堂のモニターはやりようによっては、ぐっと親しみやすい物になりそうなんだけどなぁ。
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コメント
夜桜能 最前列で良かったですね。三輪でしたか鉄輪だと思っていました。昨日は強風でしたが、この風によって一段と能の重みが出たようですね。
能は極力シンプルで、無駄を省くという点で歌舞伎のような装置は使わないですよね。舞についても仕舞と日本舞踊、言語も謡と義太夫の違いなど全て観る者の想像力を描き立てたり促したりするのかもしれません。
イヤホンガイドがあれば初めての方でもわかりますし、能楽の普及のためにもこのようなサービスを充実させることは大切ですよね。
満開の桜の演出もあり神秘的であったのではと想像しております。観てみたかったとは思う反面寒さに弱いのでこの時期の薪能は無理だなぁと早諦めムードですが。
投稿: 早々 | 2010.04.02 23:29
お疲れさまでしたー&ありがとうございました☆
夜桜&薪能、存分に堪能させて頂きました。
途中の三輪明神のところなんて、夜桜と風が吹き荒れて、
ちょっとしたコラボでしたよね~(うっとり…)。
自然の力ってスゴイ!と思いましたvv
これも屋外ならではのパフォーマンス(笑)。
途中、薪が爆発するアクシデントはありましたが(泣笑)、
最前列という願ってもない席で堪能できて
至福のひとときでした♪
投稿: Aki_1031 | 2010.04.03 19:51
ぎゃ、以前私、三輪と鉄輪と勘違いしてお話しちゃってました!?
だとしたら、すみません~
この日は昼間とーってもあったかかったのでちょっと恥ずかしかったのですが、念の為マフラー巻いて冬のコート抱えて行きました。
おかげで、それ程寒さは感じずに済んだかな。
強風がずっと続いていたら辛かったかもしれません。
会場では膝掛けを貸し出したり、使い捨てカイロを売ったりしてました。
お疲れさまでしたー&こちらこそありがとうございました!!
そうそう! あの爆発ビックリしましたよね~。
ケガ人が出なくて、ホント良かった。
高杉が守ってくれたのかも~(笑)。
ちなみに、以前一緒に鳩森神社の薪能を観た友人とさっき迄会っていたので確認してみましたが、やはり鳩森神社では実際に薪が燃えていて、時々係の人が調節しにやって来たと言ってました。今回のような遠隔操作は珍しいのかしらん?
投稿: YAGI節 | 2010.04.04 01:23