MANSAI◎解体新書その拾八 ぼくらはみんな生きている
当ブログには「ナカツリ」というブログパーツを設置しています。
電車の中吊り広告のような物が表示されるプログラムです(表示される雑誌は私が選んでいるわけではありません)。
そして、このパーツを設定して以来初めて、野村萬斎さんの名前が表示されました♪
なんだか嬉しくて、思わずその部分をキャプチャーしちゃいました。
それが右の写真です。週刊朝日の広告です。
というわけで、週刊朝日、チェックして来ました。すみません、立ち読みです(^^;)。
震災についてや、劇場の存在意義についてのコメントが載ってました。
あ……そういえば、こんなお話、「解体新書」でもおっしゃっていたなぁ……。
もう1ヶ月以上前の話ですが、MANSAI◎解体新書その拾八を見に行きました。
テーマは『大地~恩寵と重力の知覚(パーセプション)~』
ゲストはバレエ・ダンサー首藤康之さんでした。
震災時、私は4つのイベントのチケットを持っていました。
そのうち3つが中止もしくは延期となりました。
「解体新書も中止になっちゃうのかな?」と思いましたが、これは決行されました。
世田谷パブリックシアター再稼働第一弾イベントという感じだったかな。
4つのイベントの中では最も楽しみにしていた物だったので、決行されると知った時はすごく嬉しかった。
が、そんな喜ぶ自分に後ろめたさも感じました。
とても楽しかったのですが、楽しめる自分は薄情に感じられ、申し訳ない気分になってしまったのでした。
「開催してくれてありがとう!」という気分と、
「延期にしてくれたら良かったのに」という気分がないまぜになってました。
今でも決行と延期のどちらが良かったのか、正直よくわかりません。
でも、あのタイミングでの自粛に、意味はなかったような気もしています。
萬斎さんと首藤さんなんていう夢の顔合わせはそう簡単に再ブッキング出来ないのかもしれないし、あれが見られたのは本当に幸せな事だったなぁと思います。
例の如く忘れっぽい私は、この素敵なイベントの事も、どんどん忘れてしまいます。
なかなか感想をアップする気になれなかったのですが、やっぱりこの素敵なイベントの感動を残しておきたい。今更ですがアップする事にしました。
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最初に防災のアナウンスがありました。
世田谷パブリックシアターが安全な建物であるというような説明。
それでも、万が一の事があった場合の緊急時の案内。
よく憶えていないのですが、「落下物に注意して、頭を守るように」みたいな事を言われたような。思わず天井を見上げてしまった私です。
「そんな事言われると、余計恐くなっちゃいますよね」と見ず知らずの隣の方に言われました。同感ですっ!!
そして、萬斎さんがお一人で、和蝋燭を持って登場しました。
節電の為という事だったと思うのですが……
み、見えないっ!!
立ち見以外は一律料金なのですが、抽選の結果3階席となってしまった私……。
双眼鏡があるので、普段は3階でもそれ程困る事はないのですが、暗いと双眼鏡でもあまりよく見えません。もう、大ショック。
マイクは使っていたと思うのですが、なんだか声もよく聞こえません。
「こんな事なら、延期してくれたら良かったよ……」とその時は思ってました。
が、そんな勝手な事を考える自分に自己嫌悪……。
という感じで何ともいえないテンションでした。
が、萬斎さんのお話に引き込まれ、そんな悪条件は段々気にならなくなりました。
特に印象に残ったのは、劇場の意義というか果たす役割のようなお話。
「劇場は生きている事を確かめ合う場所」(←記憶朧気)というような事をおっしゃったんです。
確かに、遠いとはいえ、自分の前には萬斎さんがいる。
生の萬斎さんがいて、息をしている、喋っている。
この震災で、萬斎さんが亡くなってしまっていたかも知れないけれど、生きている事を確認出来ました。
いや、実際には萬斎さんは震災の時に海外にいたので、震災に巻き込まれている筈はないのですが、そんな情報は所詮ネットで知っただけの情報。情報なんて捏造する事も出来ます。でも劇場で生で観て、「萬斎さんは生きている」という事を確信する事が出来たんですよね。うん、萬斎さんも私も、他の客席の皆さんも……皆生きている……無事で良かった……なんて事を改めて強く感じたのでした。
いや~、姿勢が良い!!
萬斎さん程姿勢が良い人って、そうそういないと思ってましたが、首藤さんの姿勢の良い事といったら!!
立っているだけで美しい……。
私、一時期、パリ・オペラ座バレエ団が大好きでした。
ロンドン好きで、フランスよりイギリス派の私ですが、バレエ団だけは珍しくフランスの方が好きだったんです。
今よりはお小遣いに余裕があった頃、何度かオペラ座バレエ団の来日公演を見に行きました。普通の公演は勿論印象に残っているのですが、忘れられないのが「デフィレ」。
行進です。ただ歩くだけです。
なのに、引き込まれる。身にまとう空気が違う。
「バレエダンサーは歩くだけで凄いのか」と、不思議な思いで、圧倒されながら観ました。
そんな事を、首藤さんを見ながらふと思い出したのでした。
面白かったのは、首藤さんの骨へのこだわり。
最初、首藤さんが『ボレロ』を踊っている映像が映し出されました。
目の前にいた白シャツの首藤さんはとてもスリムに見えるのに、スクリーンの上半身裸の首藤さんには結構な筋肉が付いているように見えます。
「筋肉を意識されてますか?」みたいな事を萬斎さんが質問すると、筋肉より骨を意識しているとおっしゃるではありませんか。骨で踊っているらしい。
筋肉は必要最小限にしか付けないようにしているそうなんです。余分な筋肉があると逆に動きにくいとの事。
首藤さんについているのは踊る為に必要な筋肉であり、腕立て伏せなどが出来る筋肉ではないのだそうです。
骨にこだわる首藤さんは人骨模型を2体お持ちとの事。うち1体を舞台に連れてきてました。
時々手をつないでるし、「離れられない、愛しくてたまらない」といった趣だったので、「運んできた」ではなく「連れてきた」と表現したくなりました。
人骨模型には恐いイメージがありましたが、首藤さんと手をつないでいる骸骨ちゃんは可愛く見えるから不思議です。
首藤さんが骨を意識するようになったのはケガをしてからだそうです。
当時は自分の体の声を聞いていなかっただったか、対話をしてなかっただか、そんなような事をおっしゃってました。
が、今は自分の体の声(特に骨)に耳を澄ませているのですね。
人骨模型は自分の骨の声を聞くための通訳……いや、そんな事務的な物ではないか――通訳も出来る恋人――のように見えました。
「今は年は取ってしまったけれど、若い頃より体の調子が良い」みたいな事をおっしゃってました。骨と会話が出来るようになったからですね。
興味深いお話を聞いた後は、パフォーマンス♪
その頃になると蝋燭は消され、照明が付きました。照明のありがたさをつくづく感じたよー!!
萬斎さんは『三番叟』、首藤さんは『ボレロ』を互いに教え合ってました。
萬斎さんって運動神経がいいから、バレエもそつなくこなすのかと思いきや……意外にもダメ。
『にほんごであそぼ』で時々見せる「ヘタレまんさい」は、作られた物ですが、素であんなダメな萬斎さんを見たのは初めてでビックリしました(笑)。
同じ踊りでもバレエと狂言の舞は動きが正反対といって良いほど違うようでした。
天へと伸び上がるような動きのバレエ。
地を踏みしめるような動きの狂言。
対照的です。
その後、首藤さんは『三番叟』、萬斎さんは『ボレロ』を自分なりに舞って魅せてくれました。
首藤さんは割と『三番叟』っぽい動きをしていたので、教わった事をふまえてやるという趣旨かと思いきや……萬斎さん、教わった事一切取り入れてなかったっ
曲がボレロというだけで、動きは完全に狂言をやっている萬斎さんの動き。萬斎ワールドでした。
即興という態で、首藤さんはそれっぽく見えたんですが、萬斎さんはキマリ過ぎ。
「あれは、前もってかなりしっかり考えて来たんじゃないだろうか」と疑ってしまった私です。
『ボレロ』の曲に狂言の舞が意外にもマッチして、素晴らしく見事な『ボレロ』だったんです。数分前の愛すべきヘタレっぷりが嘘のようでした。「萬斎さん、ズルいよ」と思いました。
首藤さんも、そう思ったかも? あの完成度の高い『小舞・ボレロ』を先に見たら、首藤さんだって本気モードの『バレエ・三番叟』を踊ってくれたんじゃないだろうか?
なんだか、あの時の首藤さん、どんなテンションでやるか、さぐりながら、戸惑いながら踊ってたように見えたんです……。それでも、所々ハッとさせられるような動きがありましたが……
という感じで、最後は美味しい所を全部持っていった狐のような萬斎さんでした。
狐といえば、ケーブルテレビで『陰陽師2』やっていたので見ました。
1は映画館で観たのですが、2は未見でした。
2に関してはあまり良い評判を見聞きしていなかったのですが、萬斎ファンになった今の私なら楽しく見られるのかと思いきや……意外にもダメでした。
女装シーンはミッツ・マングローブさんかと……
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コメント
萬斎さんの「三番叟」、まだ見たことはありませんが、
萬斎さんの舞いについて色々読んでいますと、何となく
バレエを意識するようになっていました。
「舞う」のと「バレエ」は違うんですが、萬斎さん
のしなやかさから、そんなことを思うようになって
いたんですね。こんなことを意識するのも、自分
が前に習っていたからだなぁと思います。(笑)
今はやっていないので、カラダが少しカタクなって
いますが。(笑)
そうですか・・・・。萬斎さん、バレエはダメでしたか。
可能だと想像していたんですが・・・・。
「にほんごであそぼ」では、萬斎さんが全て考え
ているんでしょうか?
「小舞・ボレロ」は見てみたかったですね。
どんなものなのか・・・・。
「陰陽師・2」については皆さんの意見は色々ですが、
私はスサノオが何であんなツクリモノみたいなのか、
それが惜しいですね。
萬斎さんのアメノウズメの舞いは、好きになる前に
一度見たときは女装はしないほうが良かったんじゃない
かと思っていたんですが、今では完全な女性のように
見えるようになってしまいました。
その間だけ、晴明であることを忘れるようです。(笑)
「陰陽師・3」も、それらしい話はあったようですが、
いつか実現する日はくるのでしょうか。
萬斎さんは、敵役に「のぼうの城」で共演した
佐藤浩市さんを希望されているとネットで読みました。
「週刊朝日」、読んでみます。
バレエについて先に書いてしまいましたが、YAGi節
さんのお気持ちわかります。
東京の地震についてニュースを聞いたとき、真っ先に
考えたのは萬斎さんとYAGi節さんのことでした。
あの時は、お二人とも無事でほっとしました。
投稿: hiro | 2011.05.15 23:43
hiroさん
わあっ、バレエ習っていらしたんですか!! すごーい。
それなら首藤さんのおっしゃる事が、私よりもずっとよくわかって楽しめる事でしょう。お聞かせしたかった。
DVD出してくれると良いのですけどね~。
首藤さん、とってもチャーミングでした
バレエと狂言……
狂言の方が禁止事項が多いのかも。
「狂言でやってはいけない動き」というのが、萬斎さんの体に刷り込まれていて、それがバレエの妨げになっているように感じられました。
地震の際、気にかけていただいたのですか。ありがとうございます!!
投稿: YAGI節 | 2011.05.17 16:12