« 新春浅草歌舞伎2012(第2部) | トップページ | 1月の清盛 »

2012.01.28

新春名作狂言の会 2012

今年も新春名作狂言の会、行ってきました。
一般発売の前日に会場窓口で購入したので、2列目良席!!
とはいえ、同じ2列目でも先週の府中の方が圧倒的に近かったなぁ。
と、奇跡の連続良席にも贅沢な不満を口にしてみたりして。
ああ、でも、もうしばらくはこんな近くで萬斎さんを目に出来る機会はないと思います、ううう

Kyo◆トーク/茂山逸平・野村萬斎
早いもので私がこの会を観るのは今回で4回目となりました。
過去3回のトークはずっと萬斎さんと茂山千三郎さんでしたが、今回は千三郎さんではなく逸平さんでした。
逸平さん、一度生で観たいと思っていたので、ちょっと嬉しい♪

最初は逸平さんがお一人で『千鳥』の解説、
途中で萬斎さんが加わり2人でトーク、
そして最後は萬斎さんがお一人で『鬼瓦』と『弓矢太郎』の解説、
という流れでした。

面白かったのは逸平さんのお子さんが、『千鳥』の「ちりちりや ち~りちり~」という箇所を謡っていたというお話。
「知らない間に『千鳥』を覚えたか」と思いつつよく聴いてみたら、なんだか微妙に違う。なんと、大蔵流(茂山家)ではなく和泉流で謡っていたというのです。茂山ジュニアが和泉流って!
「それは由々しき事態ですね」と萬斎さん。
『にほんごであそぼ』の萬斎さんのマネをしていたらしいです。
そういえば、DVDの『RASHOMON』に入っていたトークで『陰陽師』の萬斎さんのマネをしているって言っていたのは逸平さんじゃなかったかな?(勘違いだったらすみません)
親子で萬斎さんのマネをしているのですか?(笑)
逸平さんは若く見えるので、ひょっとしたら独身かと思っていたけれど、お子さんがいらっしゃったのですね。萬斎さんといい、狂言にはアンチエイジング効果でもあるのかしらん?

そして、大蔵流と和泉流の違いについてのお話になりました。
大蔵流の『千鳥』は気軽に演じられる楽しい曲だそうですが、和泉流ではやや重くて長い難曲という位置付けらしい。
『にほんごであそぼ』で取り上げられる位だからポピュラーなのかと思っていたのに、意外と野村家ではやってないのはそういう事情があるからか? 私は今回が初見でした。
とはいえ2月に萬斎さん、やるらしいです。「そちらもぜひご覧下さい」との事でした。
忘れないうちに比較して見てみたい。でも、越谷なんですよね~。微妙だ。ちょーっと遠い、とはいえ行けないという程の距離でもなく……どうしよう。うーん、うーん、うーん……

そして、恒例「同じ小舞を同時に舞って、和泉流と大蔵流の違いを見る」というお楽しみコーナーへ。
逸平さんは座ってスタート、萬斎さんは立ってスタートしましたが、茂山家では立った状態から何かを始めるというのがあまりないらしく、逸平さんには衝撃的だった模様。
「びっくりした~」と心底驚いた様子でおっしゃってました。

ん?
あれれ?
……今、過去記事をチェックしたのですが、2009年に比較対象に選ばれていたのも『千鳥』だったみたいです。あの時いなかった逸平さんはともかく、萬斎さんまで初めて一緒に舞ったような顔して、「結構違いますね」なんておっしゃっていたのは、どういう事なのか? 単に忘れていたのか、それとも会場を盛り上げる為の演技なのか、はたまた同じ茂山家でも逸平さんと千三郎さんでは動きが異なるという事なのか……謎です。
ちなみに、もちろん忘れっぽい私は千三郎さんの動きはまるで覚えていないのでした

◆千鳥/茂山千五郎・茂山正邦・茂山逸平
『にほんごであそぼ』ではお菓子の盗み食いをしていたような気がしますが、本来は酒樽をめぐっての攻防だったのですね。
逸平さんは「私が知っている狂言の中で一番ヒドイ話。ツケがたまっているのに、まだツケで酒を手に入れようだなんて」みたいな事をおっしゃってましたが、先日の歌舞伎の元右衛門に比べればかわいいもの。狂言って安心して観てられますね♪

◆鬼瓦/野村万作・深田博治
坂口安吾をして「決して無邪気に笑うことはできないでしょう」と言わしめた『鬼瓦』。
女性に「鬼瓦に似てる」なんてヒドイ言い草ですが、安吾はそんな単純な事を言いたかったわけではない筈。
『文学のふるさと』というエッセイを読んだ時、安吾の言わんとしている所が部分的にどうもわからず、「もう一度『鬼瓦』を観れば何か気付くかも?」と思っていたのですが……うーん……? やっぱりわからない私でした(>_<)。
『文学のふるさと』は著作権が切れてるので、もう少し引用すると……

鬼瓦を見て泣くというこの事実が、突き放されたあとの心の全てのものを攫いとって、平凡だの当然だのというものを跳躍した驚くべき厳しさで襲いかかってくることに、いわば観念の眼を閉じるような気持になるのでした。
となってます。

ここまで書いて、「観念の眼を閉じる」ってどういう意味? と思い検索したら……
『文学のふるさと』の一部を出して「この文章の解説をお願いします」というヤフー知恵袋の質問がヒットしてビックリ。しかも引用箇所が全く同じ!! 同じ部分が気になる人、やっぱりいるのですね~

そんな安吾がもし、
「『鬼瓦に似てるのでお前のあだ名は鬼瓦だ!』と近藤勇に告げる佐久間象山」というシーン(by『新選組!』)を観たら、何を思うのだろう?(爆)

◆弓矢太郎/野村萬斎・石田幸雄・月崎晴夫・高野和憲ほか
狂言を見始めた頃は、チケット買う際に「観た事のある演目は避けよう(その費用で未見の演目を観たい)」と思ってました。
観た演目が増えてくると「観た事のある演目をまた観るのは仕方ない、せめて配役は違う物を」と思うようになりました。
が、とうとう、観たことがあり、配役も同じ物を観る事になってしまいました。
立衆の配役までは覚えていないのですが、萬斎さんが太郎、石田さんが当屋、太郎冠者が月崎さんという配役でこれを観るのは二度目となってしまいました。
まぁ、キュートな萬斎さんが観られる魅力的な演目なので二度目でも良いのですが……未見の演目が減ってくるのは寂しい……。
そういえば、解説の時に、狂言の演目の数は大蔵流が百いくつ、和泉流は二百いくつとかで和泉流の方が多いと言ってました。私はこれからあといくつ、観たことのない狂言と出会う事が出来るのだろう……?

帰りの電車の中で、青空文庫で落としてきた宮沢賢治の『貝の火』を読みました。
『にほんごであそぼ』の「泣くな。それをよくわかったお前は、一番さいわいなのだ」というステキフレーズが頭から離れなかったもので。
最初は楽しく読んでいたのですが、最後は衝撃的。電車の音が一瞬聞こえなくなった程です。しばらく呆然としてしまいました。
あれで「さいわい」と言えるのか?
うさぎ耳の萬斎さんにあの笑顔で「泣くな」と頭を撫でられたら、よほどの事がない限り立ち直れると思ったけれど……あれは、泣かずにはいられない~。

|

« 新春浅草歌舞伎2012(第2部) | トップページ | 1月の清盛 »

コメント

茂山一平さん、たぶんNHKの2008年の京都に関する
番組で一度見ました。
スタジオから名前を呼ばれていたので、その時は意識していなかったのですが、若々しいお兄さんですよね。
萬斎さんみたいなキュートなパパが自分のお父さんだったら・・・
私も可愛くなろうと日々、やってるかもしれません。(笑)
ホンダの新しいバージョン、萬斎さん、ほんっとうに可愛い!です。
毛糸の帽子をかぶったところがですね。
もうご覧になりましたか?
千鳥といえば、最近頭にかかっていた曲が、「鍋やつばち」でした。
(すみません、漢字が出てきません。)ひゃ~。(汗)
「ヒヤ~リ」って曲が惹きつけられるんです。
「ちりちり~や、ちりちり~」も同様です。
にほんごであそぼでおぼえたため、カステラ(小鳥型)が食べたく
なりますね。(笑)

投稿: hiro | 2012.01.31 13:13

YAGI節さん

はじめまして。初めてコメントさせていただきます。
がまといいます
実は、最近萬斎さんに魅了されて(それも鞍馬天狗のDVDを友人から借りて見たことがきっかけで)、萬斎さんのことをネットで調べているうちにこのYAGI節さんのブログを知り、私と同じく鞍馬天狗がきっかけだったことや、萬斎さんの著書や狂言の舞台などを楽しくリポートしてくださっている内容が楽しく、また素敵なお人柄も伝わってくるブログで、狂言のことなども勉強になり、過去記事から順を追って読ませていただいているところです(今2010年まできました)

現在まで読んだら記念にコメントさせていただこう・・・と思っていましたが、「越谷で千鳥」に思わず出てきてしまいました・・・。
実は来月越谷に行ってきます。しかもそれが初の狂言鑑賞です
越谷は我が家から決して近くはないのですが(我が家は東京の多摩地区周辺です・・・たぶんYAGI節さんとわりと近いかも・・・)都心に出るのとあまり変わらない距離・・・ということと、解説が萬斎さんの公演&お値段がお手ごろ(ここ重要)ということでなぜか去年選んだのが来月の越谷公演。
演目もよくわかっておらず、後から調べて「鎌腹」は有名みたいだけれど、萬斎さんが出演するのは「千鳥」・・・ふ~ん、千鳥もストーリーを調べてみると面白そう・・・くらいのことしかわかっていなかったのですが、そうですか・・・野村家ではあまりやっていないものをやる・・・という貴重な公演なのかも・・・。そのあたりも解説でお話してくれるのでしょうかね
・・・と初書き込みで長文申し訳ありません。

今萬斎さんの著作を読んだり、過去の映像を見たり・・・と萬斎さんを好きなったばかりのYAGI節さん状態。そのころのブログを読ませていただいて「うんうん、私もそう思う」と共感することしきりです

歌舞伎もお好きなんですね。
そして新撰組への熱い情熱も伝わってきて・・・私は新撰組は・・・普通に好きというくらい?(ごめんなさい
歌舞伎もあまり観たことがなく、いろいろなことに造詣の深いYAGI節さんってすごいなあ・・・と読ませていただいています。
(そうそう、私ミュージカルは大好きです!)

それでは・・・突然で失礼しました!
これからもちょこちょこ遊びに来るかも・・・どうぞよろしくお願いします

投稿: がま | 2012.01.31 13:59

hiroさん
萬斎さんの新しいCM見ましたよ~♪
帽子のも、犬を連れている方も、どちらも大好き!!
どちらも去年の物よりいいなぁ
どんどんキュートになっている~(笑)。
『鍋八撥』も好きです。

がまさん
はじめまして。ようこそいらっしゃいました♪

『鞍馬天狗』は2008年放送でしたけど、そこから遡って2010年まで読んで下さったのですか? 感激です。ありがとうございます。
過去記事って読み返すと恥ずかしく、中には削除したくなっちゃう物もあるのですが、『鞍馬天狗』の感想などは当時の昂揚感か甦って来て、楽しい気分になるので、今でも時々読み返してます(笑)。
あの頃は萬斎さんに関する物何見ても新鮮で、ホント楽しかった……。
いちいち感動していた気がします。
あの思いをまさに今、がまさんは味わっていらっしゃるのですね。羨ましい(笑)。
いえ、今も萬斎さんに夢中で、楽しませて頂いてる私ですけどね(^^;)。

越谷で狂言鑑賞デビューなのですね。おめでとうございます♪
そして、いきなり萬斎さんの解説を聞けるのですか
萬斎さんのトーク、いいですよ~。病みつきになりますよ~。
『鎌腹』も狂言らしい楽しい演目で、最初に見るにはピッタリかも。
『千鳥』は大蔵流の方が笑える要素が強いらしいですけど、和泉流はどうなんでしょうね。気になる~。って、こんな事書いてると、やっぱり見たくなってしまいます。行っちゃおうかな~。

ミュージカルもお好きですか!! 話が合いそうですね
今後とも色々コメント頂けたら嬉しいです。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします

投稿: YAGI節 | 2012.02.01 02:01

YAGI節さん

お返事ありがとうございます!!
私は「陰陽師」で萬斎さんを好きになったのですが、その頃は表面的なことしか見えていなくて・・・いつの間にか舞台もテレビもチェックしなくなっていたのです。
「鞍馬天狗」を見て「やっぱり萬斎さんってすごい!!」ともっと萬斎さんのことが知りたくなって「萬斎でござる」を読んで、芸に対する真摯さや、いい意味でのあふれる自信、素直に自分の言葉で語っておられるなかから伝わってくるお人柄に魅了されました
萬斎さんのファンが多いのはうなずけます。本当に才能があって、尊敬できる方ですものね
萬斎さんのトーク、病み付きになりますか
楽しみです

そうそう・・・ミュージカルといえば、私も「オペラ座の怪人」大好きです(最近観てないけれど・・・)
でもでも、市村さんの怪人は見てないのです
その頃三重県に住んでいて、私が観にいったときの名古屋公演は沢木順さんという方が怪人を演じておられて・・・彼の怪人も素晴らしかったけれど・・・
YAGI節さんの「ファントム~」という記事はそんなこんなで楽しく読ませていただきました(笑)

またまた長文になってしまってごめんなさい
なにせ(特に萬斎さんについては)語りだすと止まらない状態で・・・
それでは、また!
これからも楽しい記事を期待しています

投稿: がま | 2012.02.01 21:36

がまさん
萬斎さんのこと、『陰陽師』で一旦好きになったのですか。
一度冷めたのにまた好きになるって、そうそうない事では?
って、好きになるのに10年位かかった私も珍しいケースかも知れませんが。
私は『陰陽師』、映画館で観たにもかかわらず、当時はファンにならなかったので。
時を経ても魅力が衰えるどころか、魅力に気付かせてしまう萬斎さんってスゴイですね

三重に住んでいた事があるんですね。
F1見に鈴鹿行った事ありますよ~。赤福おいしいですよね♪
で、『オペラ座の怪人』、私が初めて見に行った時もファントム役は沢木さんだったと思います。
実は憶えてないのですが、山口祐一郎さんでなかった事は確かなので、沢木さんではないかと(当時はダブルキャストでした)。
二回目以降はちゃんとキャスト表を取ってあるんですけどね~。初回だけ無い……

最近YouTubeで『紅白歌合戦』の市村さんの『オペラ座の怪人』の動画を観ました。
若くてカッコ良かったけれど、歌は今の方が上手いと改めて思いました。
市村さんも、萬斎さん同様、良い年の取り方してますね

投稿: YAGI節 | 2012.02.03 00:29

そうそう、鈴鹿といえばF1ですよね。祖父の家が鈴鹿にあります。結婚して東京に住むようになってもう11年ですが

市村さんも萬斎さんも、才能があって、しかも努力を怠らない方って、本当に良い年のとり方なさってますよね!!
人間として尊敬できて素敵です
いつかお二人の共演が実現するといいですね

ではでは~

投稿: がま | 2012.02.03 10:39

がまさん
おじいさま、鈴鹿にお住まいとは羨ましい~。
そういえば、私が行った頃は鈴鹿にはあまりホテルがなく泊まる所を確保するのが大変でした。最初で最後(多分)の野宿を鈴鹿で体験した私です(>_<)。
鈴鹿ではホンダ(マクラーレン)を応援していました♪
ホンダってば、F1といい萬斎さんといい、力を注ぐポイントが素晴らしい(笑)。

ホント、市村さんと萬斎さんの共演見てみたいです

投稿: YAGI節 | 2012.02.05 02:10

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 新春浅草歌舞伎2012(第2部) | トップページ | 1月の清盛 »