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2013.02.27

マクベス

以前当ブログで
「『マクベス』にはこれっぽっちも興味がない。舞台を見に行く気もさらさらない」というような事を書いてしまいましたが……
すみません、行っちゃいました。

嘘書くつもりはなかったんです~。
実際本当にチケット買ってなかったんです。
が、世田谷パブリックシアターから、

「YAGI節がチケット買わないっていうから、ベンチシート売り出す事にしたよ。最前列だよ。ポストトーク付きの日もあるよ。これでも買わなかったら、もはや野村萬斎ファンじゃないよね」

という、松平春嶽(『八重の桜』)並に人の心を見透かしたようなメールが届き、抗えませんでした。

あ、当然、脚色してます。
実際のメールに記載されていた事といえば、

「『マクベス』
2月9日(土)10時より世田谷パブリックシアターチケットセンター&オンラインにて
補助席&ベンチシート発売開始。」

これだけ。
が、私には上述したようなメールに見えてしまったのでした

これっぽっちも興味がない物を「萬斎さんを近くで見られるからという理由だけで見に行くとは、なんてミーハーなんだ」
と情けなく思う反面、
「いやいや、それがファンでしょ? むしろファンなのに主演舞台を見に行かない方が不自然だってば」
などと自問自答しながら会場に向かったのでした。

実は……
5年前に見た『マクベス』のリーディングは、最初の数分こそ「珍しい物が見られた♪」なんて喜んでいたのですが、途中からは辛くなりました。それはそれは苦痛で……途中で逃げ出したくなりました。すごーく滅入った気分でぐったり疲れて帰宅したのでした。
「たとえ好きな人が演っても、好きになれない物ってあるんだな」と思い知らされたっけ。
どんなに素敵な人に、どんなに素敵な声で演じられても、王殺しの話が変わるわけではない。
役者や演出云々の問題じゃないんです。
それを思い知った筈だったのに……
「また、逃げ出したい気持になったらどうしよう」と不安な気持も大きかったのですが……

まずベンチシートに座って興奮。
近い、近すぎる!!
以前、金丸座(こんぴら歌舞伎)の最前列に座って、その舞台との近さに大感激し、

「私の席からは舞台に手が届きました。比喩ではありません。休憩時間に手を伸ばしてみたら座ったまま舞台に触れちゃったのです」

なーんて、書きました。
あれは金丸座ならではで、普通の劇場でそんなに舞台の近くに座る機会なんてありえないと思っていたのに、思いのほか早くそんな機会が再び訪れちゃったのでした。
開演前に試しに座ったまま手を伸ばしてみたら……舞台に手が届いちゃいましたっ!!
もっとも金丸座は正座した状態、今回はベンチシートに座った状態なので、金丸座の方が低く、より迫って来る雰囲気ではありますが……にしても、その近さには大喜び。こんな所で萬斎さんの演技が見られるんですか!? きゃーっ!!
なんかそれ迄の不安な気分が一気に飛び去ってワクワク気分になったのでした(ミーハー過ぎる……)。

以下、ネタバレありますので、ご注意下さい。

まず、冒頭は照明がキレイでした。
後のポストトークで「2階の方がキレイに見える」と萬斎さんはおっしゃっていて、確かに「2階だったらもっと素敵なんだろうなぁ」と思わされたけれど、1階からでも「わぁっ」と思う程キレイでしたよ。

そして、そして、マクベスの武器が日本刀っぽかった!!
衣裳や小道具は和洋折衷……というか、和のテイストの方が強いですね。
刀も装飾はシルバーっぽくキラキラして派手で、ちょっと西洋っぽいのですが、フォルムは日本刀。
「そういえばセフィロス(ファイナルファンタジー)も外国人みたいなのに持ってる武器は日本刀だっけ?」なんてヘンな事を思い出してしまった私です(^_^;)。
「萬斎さん+日本刀」って私が何より好きな組み合わせなんですけどーっ!!(どうでも良い)。
こんな近くで日本刀振り回す萬斎さん見られるなんてーっ!!
後半では薙刀っぽい武器を振り回す所もあって、それも無茶苦茶カッコいいんですけどーっ!!

これ……
我ながらどうかと思うのですが、「殺しの話は苦手」とか言いつつ、それがカッコイイ殺陣や踊りになってしまうと一気に好きになってしまうのです……。
日頃「ミュージカルや歌舞伎はストーリーは結構どうでもいい」と言ってしまうのはその辺りに理由があるわけです。
いや~、『マクベス』で剣舞のような動きが見られるなんて、想像もしてなかった……。と、嬉しい誤算がありました。
「みんながやってるシェイクスピアを、狂言に翻案したものならいざしらず、現代劇で萬斎さんがやる意義があるのかな?」なんて思った事もありましたが、こういう動きがあるなら、萬斎さんがやる意義もあるというものですね♪

ま、シェイクスピアの台詞を普通に言うシーンではやっぱり滅入って来てはしまうのですが。

あ、でも涙ながらの迫真の演技を間近で見られたのはやはり嬉しかった。スゴイ迫力でした。

後半は紅い葉が降ったり、雪が舞ったりするのですが、私の席にも落ちて来て大喜び♪
砂かぶり席ならぬ、雪かぶり席?
シリアスなシーンなのに、雪が落ちて来た喜びが大きく、気が散ってしまったかも。最初に1枚だけ落ちて来た桜の花びらを「後で拾っちゃお♪」と目を付けていたら、その後に大量の雪が降って、埋もれてわからなくなってしまって「あれ~」なんてなってたのでした(ばか)。
結局終了後に「(落ちて来た物は)海外にも持って行くんで持ち帰らずに、下に落としといて下さい~」なんて係の人に言われて断念しました。

が、ポストトークの時萬斎さん、「花びらは安いんですけど、モミジは高いんで」とおっしゃってたので、花びらは貰っても良かったのかしらん?
っていうか、モミジが降ってたのは言われる迄気づきませんでした。
紅い葉は普通の葉っぱっぽかったんです。ケヤキとか桜とか、そんな形。
「萬斎さんは、何をおっしゃってるんだろう???」
と不思議に思い、きょろきょろしてみると、1枚だけモミジが見つかりました。
客席に落ちて来た紅い葉の中のモミジの割合は1%位だったんじゃないだろうか?

あと、どうでも良い事ですが、ポストトーク時の萬斎さん、黒いスニーカー履いてました。
狂言劇場などのポストトークだと世田谷パブリックシアターでも足袋ですが、今回はかなり和テイストではあったけれど能舞台ではないという事で靴なのですね。
にしても、スニーカーとはちょっと意外。

という感じで、話は苦手な『マクベス』でしたが、楽しい事(邪道な事が多くてすみません)もたくさんあって、「行って良かった」と思えました。
ちなみに、今HP見てみたら、全席売り切れでした。ベンチシートは売れるだろうけれど、補助席も売れちゃうとは。さすが「のぼう様」。

Ma2 Ma1

写真左:チラシ
写真右:先日のレクチャー時にもらった折られたチラシ。一度開いたら再び同じように折れる自信がなく、未開封です

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コメント

今日のポストトークの会にいらっしゃったのですね。
ベンチシート…羨ましいです。(*^-^)本当に雪かぶる席ですよね~。
私は友の会貸切公演にて鑑賞しました。2階席でしたので…冒頭の照明、二階席からだと回転の具合で落ちて来た黒い袋まで動くように見える目の錯覚に襲われました。ほんとうにグルグル…全部で5つぐらいの丸いものがずーっとグルグル…回ってて美しかったです。白っぽく見えたけれど、お話を聞いた感じだと春なら…花筏を意識していたのかもと…思いました。
落ちてくる紅い葉…一枚80円…だそうです(だからお持ち帰りはしないでね…と)。貸切公演にもベンチシートに座っている方が一枚記念にと持っていらしたようなんですが…そのお話しを聴いて…即萬斎さまに手渡すシーンも(笑)…初演時にも使われていて、そのお話しはその時にもしていました。もみじというより大きさの大きい紅い葉(紅葉)のことかと思います…多分。剣舞も素敵でしたね。二階席からうっとりしちゃいました。遠目からも日本刀だろうことはわかったんだけど…すごい迫力でした。
パンフレットには朝日カルチャーセンターでのお話しが一部掲載されてました。装丁がとても美しいので折れないようにそっと読んでます。

投稿: 遥耶 | 2013.02.27 22:02

本当に良かったですね。♪♪
ミーハーでも何でも、良いではありませんか。♪
萬斎さんを見たい気持ちだけでいいと思います。
私は、といいますと・・・。3月4日のチケットを取ったのですが、仕事の都合ができてしまいましたので行けなくなってしまい
ました。
「補助席・ベンチシート」のおしらせは見ましたが、ベンチシートの意味を全くつかんでいなかったのです。
何の席なのかなぁ~くらいは思っていたのですが。(笑)
本は読んだことがあるので、舞台でぜひ見たかったですね。
またの機会が訪れるのを待って…と思います。


投稿: hiro | 2013.03.01 11:45

はじめまして。

度々こちらに訪問させて頂いております。

私も27(水)に「マクベス」を見て参りました。

シェイクスピアは、萬斎さんの言葉を借りれば、饒舌で、膨大な台詞の量…。果たして私に理解出来るだろうか…と思いました。

なので、最初にジュニア向けの、里中満智子さんの挿し絵のあるシェイクスピアシリーズでマクベスを読みました。登場人物が多く、その都度、頭の中を整理しながらです…概ねストーリーを理解しました。
その後に河合先生の「新訳 マクベス」を読みました。

今回は90分ほどの上演とのことなので、当日、再び本を開き、要所要所の場面を読みました。原作を大幅に削ぎ落とした構成との事でしたが、何とかストーリーの展開に付いて行けました。

アフタートークで、聞き手の山口さんが、
「戦いの場面では、矢(矢幕?)が飛んで、臨場感がありましたね」と仰ってましたが、えっ?そんな事あったかな?…私は全くそれには気付きませんでした。残念でした

バーナムの戦いで剣を振りかざし相手方を斬る様は、オイディプスが三差路で父とその一行を殺害したことを確信した場面のそれを思い出しました。

今回とても和のテイストが多く、美しい仕上がりでしたね。マクベスが命を落とし、冬の幕がマクベスを覆い尽くし雪が舞う、その静寂さがとても印象深かったてす。

投稿: 春一番 | 2013.03.01 12:38

遥耶さん
「モミジは手の形をしてるし」なんて事もおっしゃってたので、一枚80円なのはモミジの事だと思いますよ~。
ただ、やはりお高いせいか、枚数はほんのわずかだったのではないかと。
たまたま見つけた1枚は、手に取って見たわけではないのですが、明らかに他の葉っぱと違って高そうでした(笑)。
紅いんですが、ちょっとだけグラデーションっぽく黄色が入っていました。

剣舞、ホント素敵でしたね

hiroさん
えええっ、行けなくなってしまったのですか!!
私なんかが観てしまい、楽しみにされていたhiroさんが観られないなんて……申し訳ない気分です。

「ベンチシート」という言葉からは、確かに良席は想像出来ませんよね。
私は『ファウストの悲劇』もベンチシートで観たので(その時は2列目でした)、「もしかして今回も前方に設置されてる?」と思ったのですが、そうでなかったら後ろとか側面を連想したかも。
最前列とはいっても、近すぎて見辛い席なんだと思います。
本来売らないような席ですよね。が、ミーハー的には最高の席という(爆)。

春一番さん
はじめまして。ようこそ
私と同じ日にご覧になっていたのですね♪
勉強熱心でいらっしゃいますね。それでこそファンです!!
私はファンの風上にも置けない……

初演は観てないのでわからないのですが、写真などを見ると今回の方が圧倒的に和テイストになっているようですね。
本当に、美しかったです。

投稿: YAGI節 | 2013.03.02 18:23

YAGI節さん

マクベスご覧になったのですね!!しかも、27日ポストトークつきの昼公演ですか!!!私も同じ公演を観劇しました〜!!!

私は2階席だったので、舞台美術を楽しむには最適でした。布を使った様々なアイデアに脱帽したし、美しい舞台でしたね。(そうそう、横からですが春一番さん…もうこのコメントはご覧にならないかな〜矢が飛ぶというのは、下に敷いてあった布の裏面に矢の模様が書いてあって、それをさ〜っと引き揚げて模様を見せて、矢の飛ぶ様子を表現していたのです。)

海外公演を意識してか、衣装も日本的だし、色々な場面でリアルに見せるのではなくて、象徴的に表現することなど、日本的な演出だな〜と思いました。さすが萬斎さん、海外公演でも大絶賛間違いなし!なんて思いました

でも、衣装の細かい部分や役者さんの演技や動きは、やはり一階席の方がよく見れたでしょうね〜
刀や薙刀?を振り回す萬斎さん、カッコ良かったですよね〜!!!あれはもっと近く見たかったです〜(>_<)
遠目でも充分カッコ良かったのですが

ポストトークも面白くて大満足でしたね!!「これが聞けて、お値段が他の日と変わらないなんてお得〜!!」なんて、セコいことを考えて喜んでおりました

ポストトークの時に最前列にベンチシートがあるのを見て(芝居中は気付かなかった)「いいなあ、あの席近いなあ」なんて思っていたのですが、YAGI節さんがあそこにおられたのですね〜☆
今後は、ベンチシートも要チェックですね!

お財布に余裕があれば、遠くの席と近くの席と両方体験するといいのでしょうが(萬斎さんもそんなこと仰ってましたね)たぶん、NHKで放送してくれそうなので、それで近いショットを楽しもうと思います

投稿: がま | 2013.03.04 13:30

がまさん
次にがまさんからコメント頂いたら、「あんな事書きましたが、行く事になりました~」とお知らせしようと思ったのですが、思ってからはコメントが無かったもので、事後報告となりました……って、思うのが遅すぎ

ポストトークは、ほんと楽しいですよね。
世田谷パブリックシアターの公演などでは本編には萬斎さん出ないのにポストトークだけ出るなんてケースもあったりして、それだけでも無茶苦茶心引かれたりします(笑)。

ベンチシート、普通の席が相当売れてからでないと販売されないのかも。
世田谷パブリックシアターではあまり聞いた事ないような……?

投稿: YAGI節 | 2013.03.06 12:31

そうそう、最近ご無沙汰していたのですよね〜久しぶりに訪れてみたら「マクベスご覧になった」と知って、しかも同じ日で、興奮してしまいました
ポストトーク、いいですね☆ポストトーク夜公演が多くて・・・主婦だし、夜の外出があまり好きでないので、昼公演でポストトークつきは嬉しかったです

ベンチシートはレアなのですね☆
いつか超至近距離で萬斎さんを拝見したいです〜

投稿: がま | 2013.03.08 10:39

がまさん
萬斎さんのファン、主婦の方多いと思うので、昼のポストトーク増やしてくれるといいですね。
あ、実は私も平日昼間休みの事が結構あるので、昼賛成なんです♪

ベンチシートは次いつあるかわかりませんが、萬斎さんを近くで見られる機会というのは結構あると思いますよ。
ホールなどの狂言普及公演だったら、チケット発売開始と同時に会場に直接申し込めば、最前もそれ程難しくないと思います。
……『のぼうの城』効果で今後は難しくなるのかな?

投稿: YAGI節 | 2013.03.10 22:25

本当に、NHKさんで放送して下さったらいいなぁと思います。(前なら、芸術劇場ですね。なつかしいです・・・。)
今週の『笑点』では、「エネルギー」という2人組の芸人さんの狂言を取り入れたコントを見ました。
小学生の男の子の役の方がリコーダーを吹いているところに、近所の狂言師のおじさんが通りかかって、一緒に遊ぶというものでしたが、本当に面白かったです!!(笑)
昔懐かしい遊びの、グリコ・チョコレート・パイナップルでは、すり足で「ち~よ~こ~れ~い~とお~」と進んできますので、子供に、「おじさん、ずるいよ!すり足だから、すぐに進んじゃうじゃないか!」なんて言われたりして、吹き出してしまいました。
他にも、リコーダーの練習に付き合ってやろうということで、「さくら・さくら~」を謡のようにうたったり、「だるまさんがころんだ」では舞いの様にポーズを決めたりと、狂言を習っているのかな?と思いながら、見ていました。
イヤ、もう笑いっぱなしでございました・・・。
また、やってくれないかなぁ―と思います。
YAGI 節さんももし見ることができたら、ぜひ、ご覧を・・・。
今年は『解体新書』に行こうかなと考えています。


投稿: hiro | 2013.03.12 12:13

hiroさん
『笑点』、毎週見ているのですが、今週は途中から見たので、エネルギー見逃しました~
そんな楽しそうなネタをやっていたとは。
すり足だと、「グリコ・チョコレート・パイナップル」で有利なのですか(笑)。

『解体新書』行かれるかもしれないのですね。
狂言ではないので、人にオススメして良いのかは微妙ですが、私は大好きです♪
ゲストによって若干の当たり外れはあるので、いい時に当たると良いですね。
八代亜紀さんの会はどうなるかな~。

投稿: YAGI節 | 2013.03.13 02:32

今、3月10日の「笑点」の動画を検索して見ました。
で、改めて見てみましたら、セリフが「ち~よ~こ~れ~い~とぉ~」ではなく「ぐ~り~こぉ~」でした。
すみませんでした。思いこみで間違えてしまいました。
すり足はぜひとも有利です!!コントの中では『伝統のすり足』と坊やが言っていました。(笑)
のばしながら進めるので、歩数もあっという間ですね(笑)
『解体新書』は、本とDVDを見ていました。
バレエの首藤さんがゲストの時は行きたかったですね。
家では「BSにっぽんのうた」を見ていますので、八代亜紀さんがゲストは嬉しいですね。

投稿: hiro | 2013.03.15 13:28

hiroさん
ご丁寧に訂正ありがとうございました。
解体新書、「当たり外れはある」と書きましたが、首藤さんの回は超当たりって感じでした。ほんと、hiroさんにお見せしたかった……。
「BSにっぽんのうた」、ご覧になってるのですか。
親しみのある人を生で観られるのって、嬉しいですよね♪

投稿: YAGI節 | 2013.03.19 01:26

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