かもめ
原作読んだ事はないし、舞台を見た事もなかったのですが、なんとなく私には合わないような予感がしていた『かもめ』。
が、「世界的な名作を食わず嫌いするのもどうか」という思いがあり、野村萬斎さんご出演のこの機会に見てみる事にしました。
演出は大好きだった『時効警察』のケラリーノ・サンドロヴィッチさんだし、キャストも豪華だし♪
以下ネタバレあります。結末も書いちゃいますので、お気を付け下さい。
いや~、予想以上に笑えるシーンがありました。
帰宅後にすぐ青空文庫で原作読んでみたんですが、原作読んだだけではとても笑えるとは思えない部分が笑えるシーンになっていました。それはケラさんと役者の皆さんのおかげですね。大竹しのぶさんに攻撃される萬斎さん、面白かったな~(笑)。
が、恐ろしい話でした。
若くて純粋な娘(ニーナ)が、ちゃらい有名人(トリゴーリン)に恋したばかりに破滅し、その娘を愛していた青年(トレープレフ)は自殺してしまうという救いようのない話です。
人を好きになるって恐ろしい。
萬斎さんを好きになると恐ろしい(トリゴーリンです)。
でも、萬斎さんの事なら好きになっちゃうよね~(トリゴーリンです)。
そして捨てられても、嫌いになれないんだろうなぁ。
トリゴーリンを演じているのが別の人だったら、「あんなヤツの事、とっとと忘れればいいのに」と思うに違いないのに、萬斎さんだと「前よりももっと愛している」というニーナの台詞に妙に共感してしまうのでした。恐ろしい恐ろしい。
なんか説得力がありまくりでした。
萬斎ファン以外の人に対してもそんな説得力あったんだろうか?
萬斎さん扮するトリゴーリンは、藪原検校やマクベスのような悪党ではありません。
温和で礼儀正しくて有名人なのに気さくで親しみやすい一見善良な市民です。法を犯すような事は何一つしていない。
藪原検校やマクベスみたいな人はそうそういないと思うけれど、トリゴーリンはどこにでもいそう。そこが恐ろしい~。
っていうか、ニーナの人生はトリゴーリンによって狂ってはしまったけれど、ただ単に「一つの恋が終わっただけ」という見方も出来る。
あ、ご存知ない方の為に補足しておくと、トリゴーリンは作家なのですが、途中で「小説のアイデアが浮かんだ」と言うんです。
それは「ふとやって来た男が、若い娘を退屈まぎれに破滅させてしまう」という物。
そして、それが現実になってしまうので、「小説のアイデアとかいいつつ実際にも意図的に破滅させた」という風に思えて、「トリゴーリン、悪い奴」と見えてしまうのですが、あくまでそれは結果であって、ひょっとしたら「本当にニーナの事を好きになったけれど結局うまく行かずに別れただけ」という事なのかも知れないわけで……だとしたらトリゴーリンを「悪い奴」と決めつけるのもどうかという気はするんですよね~。もし優柔不断な人の事を悪い奴というのであれば、「トリゴーリン=悪い奴」ですけど。
人は自分では意識していないうちに他人を傷つけてしまう事もあるし、そこがまた恐い。
意図的だろうが、無意識だろうが、結果的に傷つけてしまったら同じ事なのか。
「愛する人より愛してくれる人と一緒にいる方が良いのかなぁ」なんて考えそうになりましたが、そんな思いはトレープレフを愛しているのに振り向いてもらえず別の男性と結婚するマーシャの不幸な姿によって打ち消されます。
う~ん、ままならない……。
という感じで、不幸な人ばかりが出てくる重い話で色々考えさせられるのですが、萬斎さんがステキだったので、「見られて良かった」というミーハーな感想に行き着くのでした。
体調が悪い事を忘れて最後まで見られました♪
でもやっぱり萬斎さん、恐いよね。
ハマるとヤバイよね(違)。
今回のチラシやウィキペディアではトレープレフの名前が一番上に書いてありましたが、青空文庫ではアルカージナの名前が一番上に書いてありました。
アルカージナがメイン扱いの舞台もあったようですね。
あと、上に「ケラさんと役者さん達のおかげで笑えるようになっていた」みたいな事を書きましたが、青空文庫には「喜劇」と書いてありました。
え~、あの戯曲で、ケラさん以外の方が演出して喜劇になるものなのかな~?
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コメント
前の20日にホテルに泊まり、9月21日に見てきました。
渋谷にホテルを取りたかったのですが、申込が遅かったので
何とかネットで探しまして、『新宿のワシントンホテルと航空券のパック』で取ることができました。
2階席の前から3列目で見ていたのですが、オペラグラスを使わなくても目が良ければ、顔が見ることができるくらい眺めのいい席だと思いました。
はじっこの壁際で、舞台の皆さんがはじよりに来られると、
中2階席のパイプが目に入ってしまい、かがんでみたりしましたが・・・。(15分の休憩の時に係りの人に注意の呼びかけをされてしまいました。何故か・・・?)
もう、萬斎さんのトリゴ―リンでなければ、考えられません。
誰が悪いというのではないのでしょうが、『罪』はあるでしょうと思うのです。(十字架に括られてなさい、萬斎さん)
捨てられてもなんてのは、私はいいですが。(笑)
相手が萬斎トリゴ―リンさんでも、そんなみじめなのはイヤです。(捨てられても愛してるなんて無理)
そんな、男性なんか早く忘れて、再出発ですよ!
彼はあのまま、アルカ―ジナの側にいるんでしょうか?
萬斎さん、大竹しのぶさんにクチャクチャニされて人形見たいでしたね。(^O^)
アルカ―ジナしのぶさんの本音のシーンが面白かったです。
図書館で借りようと思ったら、1冊を残した殆ど借りられたいました。今、短編集を読んでいます。
私の隣にお母さんと娘さんが座っていらしたのですが、舞台が終わった後、「いい舞台だった」とおっしゃっていました。
長々とここまで書いてしまいましたが、すみません。
お体、大事にしてください。
投稿: hir | 2013.09.27 13:08
hirさん……ってhiroさんですよね(^_^;)
遠征お疲れ様でした♪
前傾になると、後ろの人の視界を遮る事があるんですよね~。
「前傾にならないで下さい」と放送を流す劇場もある位です。
なので、ひょっとしたら後ろの席の人からクレームが入ったのかも。
私も実際自分の視界が遮られる迄は、その程度の事で後ろの人の邪魔になるとは気づいてませんでした……(-_-)。
「捨てる」というと言葉が悪いけれど、愛情がなくなっても一緒にいる事が必ずしも良いのかは微妙な気がするんですよね~。
凄い飽きっぽくて次々女性に手を出すのはどうかと思うけれど、トリゴーリンの場合はニーナとアルカージナ以外の女性の噂は出てこないですよね。むしろドールンの方が女たらしの気がしました。浅野さんがやっていたせいか、そうは見えなかったけど(笑)。
人形みたいに吹っ飛ばされる萬斎さん、最高でしたね♪
原作、本文中にもリンクを張った青空文庫で読めますよ~。
短いから、WEBで読むのもそれ程苦じゃないと思います。
投稿: YAGI節 | 2013.10.01 20:37
はい、hiroです。すみません、気がついたときには
『送信』ボタンを押してしまっていました。
ありがとうございます。
東京から戻ってきてから、頭の中に『カルミナ・ブラーナ』
がかかっております。
『ファウストの悲劇』にかかっていたのはこの曲でしたでしょうか?
リンクを張ってくださった青空文庫で読みますね。
今から、来年の「東京遠征」のためのお金をためる準備に
取りかかります。(笑)
この「東京遠征」という言葉が気に行ってしまいました。
飛行機で1時間と少しで着いちゃうんです。
本を読んでたら、『もう?』って感じで、あっという間でした。(笑)
投稿: | 2013.10.03 12:04
hiroさん
『カルミナ・ブラーナ』、かかってたみたいですね~。
既によく覚えてないけど(爆)。
渋谷に行くと『ファウストの悲劇』を思い出してしまうという感じですか(^^)。
新選組ファンになってからは北海道行ってないので行きたいのですが(土方歳三ゆかりの地がたくさんあるので)、所要時間は短くてもお金が大変ですよね~。
お金持ちになりた~い(笑)。
投稿: YAGI節 | 2013.10.05 16:57
YAGI節さん
かもめご覧になりましたか!
…とその前に…お身体の具合良くないのですね(>_<)
その後いかがですか?
どうぞどうぞお大事に…
かもめ、私もみました☆
実はチケット発売日にうっかりしていてチケットを取り忘れ、立ち見覚悟で当日券で行ったら、なんとキャンセルが出ていいお席で見てしまいました
トリゴーリン…本当に悪い男…
チェーホフ自身が「喜劇」と銘打っているから喜劇なのだろうけど、演出次第ですよね…
でもあれを悲劇として演出しちゃったらもう悲惨すぎるかも…まあ、喜劇にしてもなんともブラックな笑いというか…もう笑わないとやってけれないというか…
紳士的な悪い男…萬斎さんはまってましたね
投稿: がま | 2013.10.13 23:48
がまさん
当日券って、意外と良い席出てたりするらしいですね。
でもダメな事もあるし……
吉と出て良かったですね
なんか笑える部分は萬斎さんが担っていたような。
萬斎さん出てなかったら、笑えないかも……
と思いましたが、トリゴーリンのせいで悲劇になるのか(爆)。
いや~、ホント萬斎さん、はまり役でした
体調は……ぼちぼち?です。
来週4日間だけ、検査入院する事になりました。
でも、解体新書は行く!!(笑)
投稿: YAGI節 | 2013.10.16 00:05