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2015.01.17

狂言師が狂言回し

楽しみにしていた『オリエント急行殺人事件』見ました。
素晴らしかった! 第2夜が。主役の野村萬斎さんがほとんど出てこない第2夜が!!(爆)

放送前に萬斎さんが「(他のキャストの)皆さまを引き立てた」みたいな事をおっしゃっていましたが、まさにそんな感じでした。
1夜目は
「これだけ目立って喋りまくっておいて引き立て役だなんて」
と半ば呆れてしまったのですが(失礼過ぎ)、二夜目を見ておっしゃった意味がよーくわかりました(^_^;)。
ホント、萬斎さんは引き立て役……というか、狂言回しでした。狂言師が狂言回しって……三谷さんのシャレですか?

思うに……
第1夜は前説でした。
三谷さんが書きたかったのはどう考えても第2夜のお話ですよね。
第1夜は、あらすじをナレーションで済ませちゃっても良かったんじゃないかと思ったほど(大袈裟)。
もっとも、さすがにそういうわけにはいかないし、開局55周年記念ドラマだからおまつりにしちゃった感じ? 夢のような豪華キャストを出したり、おかしなキャラクター(萬斎さん)を出して盛り上げた、というか場を繋いでいたような印象を受けました。
そんなお祭りは楽しくはあったけれど、ドラマとして特別素晴らしいという感じではなかったような気もします。

というわけで第2夜ですが……
「三谷流得意技」が炸裂しまくりの、三谷さんらしい素晴らしい作品だったと思います。

たとえば、
得意技その1「しばりを設け、その中で想像力を働かせて遊ぶ!」。

今まで生きてきた中で私がもっとも好きなドラマ『新選組!』では「一話につき一日の話に限定」「ナレーションはなし」などのしばりを自身に課した三谷さん。
「しばりがある方が面白い作品が作れる」みたいな事をおっしゃっていた気がします。
(萬斎さんもかなり昔から似たような事をおっしゃってて「リンクしてるじゃん!」と思った事があります)
そして最近は、「結果ありき」というしばりを設けているように見えます。
歴史上の人物の話などはまさにそうで、既に「こういう事をしてこういう一生を終えた」という結果があり、そこに至るまでの過程を想像して、提供してくれます。
『新選組!』もそうでしたし、萬斎さん主演の舞台『ベッジ・パードン』も「夏目漱石にはこんなイメージなかったけれど、こんな一面があって、こんな事があったかも」と思わせるような作品でした。
『オリエント急行殺人事件』は実際の事件ではないけれど、「この事件の裏にこんな事があったかも」という想像から生まれたという事で、似たタイプの作品という事になると思います。結果に至るまでの過程を想像して楽しませてくれたという感じ。

そして、得意技その2「群像劇・色々な人の魅力で魅せる!」

三谷さんは劇団の脚本家出身という事もあって、出演者皆に光が当たるような作品を作るんですよね。
「無駄な登場人物を出すのが嫌い」というような事をおっしゃっていた気がします(うろ覚え)。
登場人物皆に愛をこめている。だから魅力的なキャラが沢山出て来る♪
『新選組!』は近藤勇が主役でしたが、ファンの間では一番人気は土方歳三でした。ちなみに私が斎藤一推しだった事は当ブログをよくご覧になっている方ならご存じですね。山南敬助の人気も高かったなぁ。
という感じで、三谷作品の中では必ずしも主人公だからといって一番魅力的に描いてもらえるとは限りません。原作はあいにく読んでいないのでわからないのですが、三谷版オリエント急行殺人事件は、まさに群像劇で主人公以外の魅力的な人物がしっかり描かれてました。

たとえば二宮和也さんが演じた幕内。
「気持ち悪い」とか言われてましたが(^_^;)、愛しくかわいかった。田舎に帰ろうか葛藤するシーンでは泣かされました。

『VS嵐』に出ていた時は「四季る」なんていう「オダる」(わからない方はフィギュアスケートファンに聞いてね)並の固有名詞を冠した屈辱的な新語を生み出してしまった石丸幹二さんもドラマの中では素敵でした。

杏さん演じた安藤伯爵夫人も、「おいおい」と思う所はあるのですが、なんだか憎めなかったなぁ。かわいかったです。

玉木宏さんも第1夜と第2夜のギャップが面白かった

八木亜希子さんも富司純子さんも……
って、ああ、もう書きだしたらキリがないよ!!

「仇を討つ」と言いながら、なかなか動き出せない松嶋菜々子さんの苦悩は大石内蔵助のよう。実行に移すまでに色々な事が起こる様はまさに『仮名手本忠臣蔵』!
あそこまで一つの事件に至るまでの経緯を細部まで想像して、じっくり描いてくれるなんて、スゴイです。
そして涙あり笑いありで、ホント面白かった!!
私、三谷さんの作品では、がっつり笑わそうとしている作品よりも、シリアスな中にちょっぴり笑いが散りばめてある位の物の方が好きなんですよね。

第1夜では仮面をかぶって人形のようだった乗客役の皆さんが、第2夜では仮面を剥いで生き生きと人間らしさを見せました。
そして三谷さんは、今回は勝呂の事よりも乗客達の事を描きたかったんですよね。

という事で、萬斎ファンとしてはちょーっと寂しかったけれど、三谷ファンとしてはとーっても楽しめた『オリエント急行殺人事件』でした。

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