Life On Mars?

アルバム『ハンキー・ドリー』に収録されている"Life On Mars?"のボーカルはやや不安定です。高音はふらつく事があるし、声量はなさそうに聞こえるし、へなちょこな感じで「あれ、ヘタ？」と思ってしまう(ホントはそんなに下手じゃない)。
でも、表現力は抜群で、何ともいえない味があり、引き付けられずにはいられません。
歌詞の意味はよくわかりませんが、メロディーはドラマチック。大好きです。

私が初めてボウイを生で見たのは SOUND+VISION TOURでした。
ボウイはこのツアーを最後に過去の曲を封印するなんて、とんでもない事を言っていました。
このツアーの事はあまりに古すぎて記憶が曖昧なのですが、一番印象に残っているのが"Life On Mars?"。
歌っている時には背後に稲妻メイクのボウイが大写しになっていたのに、歌い終わったらそのスクリーンがすーっと上がって消えてしまったのです。
この瞬間にジギーがまさに死んだように思えてとても悲しかった（「アラジン」というべきなのか？）。

そんな封印をやぶって、A REALITY TOURで歌われた"Life On Mars?"はそれはそれは素晴らしかった。そして、その時のボウイの歌は『ハンキー・ドリー』とは別人のように上手かった。

ＣＤ通りに歌ってくれなくて不満に思う事が多い私ですが、これだけは「どちらも素晴らしい」と思えました。
2004年に朗々と歌ったボウイのよく通る響く声には聞き惚れました。
うん、あれはジギーでもアラジンでもない。「今のボウイなんだ！　昔のボウイではないんだ!!」と強く感じました。
「もうジギーはいない」と思ったけれど、悲しくはなかった。
何度目かの充実期を迎えているボウイを「さすが、私の大好きなボウイだ」と誇らしく見つめた夜でした。