« 好酸球のお話 | トップページ | 広島に行ってました »

2017.03.09

沈黙―サイレンス―

今まで読んだ本の中でもっとも衝撃を受けた小説といえば、遠藤周作さんの『沈黙』か
ジョージ・オーウェルの『1984年』です。
「好きな小説」ではないですよ、「大きなショックを受けた小説」です。

『1984年』は
村上春樹さんに『1Q84』を書かせ、
デヴィッド・ボウイには同名の楽曲を書かせました。

最後の誘惑 [DVD]そんなボウイが出演していた映画にマーティン・スコセッシ監督の『最後の誘惑』があります。
司祭を目指していた事もあるというスコセッシ監督は、『最後の誘惑』で結構なバッシングを食らいました。キリストの描き方が人間らし過ぎて(?)一部の信者には受け入れ難かったらしい。
そんな頃『沈黙』を読んだスコセッシ監督は「これを映画化したい」と思ったそうです。

一見関係ないアイテム達が、繋がりましたね(笑)。

それにしても、あれを映画化しようだなんて、さすがスコセッシ監督。
実現にこぎつけるまで、色々大変だったみたいです。
しつこいようですが、好きな小説ではありません。
しかし、あの衝撃作がどんな映画になっているか、どうしても気になって、映画『沈黙―サイレンス―』を観に、映画館に足を運びました。

この先ネタバレあります。

沈黙 (新潮文庫)私と、小説『沈黙』との出会いは中学生の頃でした。
国語の教科書に部分的に載っていました。無茶苦茶引きこまれ、すぐに買ったか借りたかして全部読み、圧倒されたのでした。
あまりにもヘビーで、それきり読み返したいと思う事はなかったのですが、その後、本当に色々な事を考えさせられました。
「なぜ、信者達はそこまで信仰を大切に出来たのか?」
「神は本当にいるんだろうか?」
そして、当時はあまり意識しなかったんですが、もしかしたら

なぜ、日本では(他国ほど)キリスト教が普及しなかったんだろうか

という疑問も(映画を観るまで忘れてましたが)長く自分の頭の片隅にあり続けていたのかもしれません。
というのも、なぜか私、大学では比較宗教学というゼミを選択しちゃったんです。

恥ずかしながら入学したのは滑り止め大学で、特別心引かれるゼミはありませんでした。
ただ、一般教養で受けた比較宗教学の授業が割と面白くて、「もう、この先生のゼミでいっか」と軽い気持ちで選んでしまいました。その面白かった授業の中に、まさに日本にキリスト教が普及しなかった理由についての考察が出て来たんです。

Silenceイッセー尾形さん扮する井上筑後守は「日本は沼地」と言っていました。沼地には根が付かないという意味で。

イッセー尾形さん、怪演でした。
ロサンゼルス映画批評家協会賞で助演男優賞の次点入賞(?)を果たしたそうですが、なんともいえなかったー。
井上筑後守は「キリスト教徒に弾圧を加えるデビルのような恐ろしい男」と噂されていますが、一見好々爺なんです。イッセー尾形さんに「おじいちゃん」というイメージはなかったけれど……「おじいちゃん」だったー。
語り口はソフトで丁寧、優し気な笑みを浮かべます。
私は原作を先に読んでいたので、「騙されないからっ」と思いましたが、何も知らない方が「デビル」を想像して、あのイッセー尾形さんを見たら、ビックリするんだろうなぁ。
いや、でも、なんてったってイッセー尾形さんだから、日本人だったら「アヤシイ」と思うかもしれない(笑)。アメリカ人が見たらどう思うんだろう???

この「おじいちゃん」の繰り出す精神的な攻撃のいやらしい事!!(えっちな「いやらしさ」ではありません)
この映画は拷問シーンがいやらしいのはもちろんなんですが、それよりむしろこの筑後守の精神的な攻撃のいやらしさといったら!!
『北風と太陽』パターンです。
……わかりにくい?
力ずくの攻撃よりも精神的な攻撃の方が効くという事を言いたかったんです。
太陽がいやらしいと言っているわけではありません(^^;;;;;;;)。

いや、筑後守もまた、本当にいやらしい人間かどうかは微妙で。
「お前はわしに負けたのではない、日本という沼地に負けたのだ」というセリフに思いやりを感じたのは私だけ……ではないですよね。
すごく真っ当な事も言うんです。あ、もしかしたら、真っ当な事ばかり言っていたかもしれない? なんか、嫌な事も言っていたけど、「くぅ、痛いけど……その通りかもしれないですよねー」と納得せざるをえないというか。

話逸れましたが、
「どうして日本は沼地なのか」というテーマの補講を、比較宗教学の講義でしてもらえたような気がして引きこまれた私は、ゼミまで取っちゃったのかもしれない……と今頃思い至ってしまったのでした。比較宗教学の講義にもゼミにも『沈黙』の話題は出たことありませんけどね(^_^;)。

んー、村上春樹さんには『1Q84』を書かせ、デヴィッド・ボウイには同名の楽曲を書かせた『1984年』もすごいけれど、
私に比較宗教学のゼミを取らせ、マーティン・スコセッシには映画を撮らせた『沈黙』もすごいなぁ……と思った夜でした。変な並べ方して、すみません。

|

« 好酸球のお話 | トップページ | 広島に行ってました »

コメント

おはようございます.

「沈黙」,友人に誘われたので観にいきました.
週末だったけど,劇場はほぼ満員だったので,意外に注目度は高いのかな?

映画自体は,,,うーん,悪くないけど傑作ではない,というぐらいかな(^^;.
拷問の描写がけっこう残酷ですが,こういうの苦手なんです(^^;.

「日本にキリスト教はなぜ根付かなかったのか」というのは僕も以前から疑問に思っていました.
この映画に答えはあるのかなと思って観ましたが,
残念ながら明確な解答はなかったように思います.
まあ,そんなに簡単に答えられる問題ではないですが.

遠藤周作の小説は未読です.
実は持っているんですが,まだ読んでいないのです.
買ったのは10年くらい前かも(^^;.
小説を読む時間がなかなかなくって.
YAGI節さんがそこまで印象に残った小説なら,読む価値はありそうですね!
「1984年」も読んでません.もうちょっと読書しないとなぁ.

イッセー尾形は怪演でしたね.
塚本晋也に注目していたのですが,けっこう最初のほうで死んでしまいました(^^;.

最近観た映画では,ポレポレ東中野で観た「ゴンドラ」がすごく良かったです.
30年くらい前の作品ですが,幻想的で素敵な映画でした.


投稿: cake | 2017.03.10 08:54

cakeさん
cakeさんも御覧になりましたか。

>意外に注目度は高いのかな?

浅野忠信さんとか窪塚洋介さんとかも出てますしね。
窪塚さんは、すっごく久し振りに見ました。

拷問シーン、もちろん私も苦手ですー。
拷問の種類が豊富というのもなんとも……(>_<)。

投稿: YAGI節 | 2017.03.14 23:45

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 好酸球のお話 | トップページ | 広島に行ってました »