剛心
先週、2018~2020年の木内昇さんの作品というタイトルの記事を書きましたが、2021年発売の本も読みました。
『剛心』(ごうしん)です。
「木内さんの作品」という以外の情報は全く入れずに読みはじめました。
図書館から借りたので右の画像のような帯はついておらず、帯に書いてあるような基本的な事さえ知らなかったのでした。
表紙の絵からは「日本橋の麒麟」を連想したのですが、私が知らないだけで、「あんな感じの麒麟像は他の所にもあるかもしれない」と思い、日本橋であるという確信は持てずにいました。
冒頭に井上馨と伊藤博文が出てきたので、「面白そう!」と思いましたが、彼らの名前が出てくるのは最初だけでした。一人称がころころ変わって、誰が主人公なのか、最初はわかりませんでした。
これは、私が大好きな『新選組 幕末の青嵐』などと同じスタイルです。ただし、新選組隊士だったら、私にとっては皆お馴染みなので、ころころ変わってもついていけるのですが、『剛心』に出てくるのは井上・伊藤以外は知らない人ばかり。名前も「妻木頼黄(つまきよりなか)」とか、「鎗田(やりた)」とか、読み方が難しいんです。「妻木」の事、途中から「サイキ」と読んでました(恥)。
しかも、「石」がどうとか、「コンクリート」がどうとか、全く興味のない事について書かれています。
「いくら木内さんの本でも、これは私には楽しめないかも」と思いかけました。
なのに……面白かった!
全く興味のない話でも面白く読ませてしまうのが木内さんなんですよね。
全く興味のない話でも面白く見せてしまうのは三谷幸喜さん。
源義経死後の時代には興味なかったのに、さらに頼朝まで亡くなっちゃったら私にとってはつまらない筈なのに、相変わらず『鎌倉殿の13人』には惹きつけられてます。
すみません、話がそれました。
サイキさん、もといツマキさん、無茶苦茶カッコいいです。
木内さんは、いつもステキな人を主役にするとは限りません。でもツマキさんはカッコ良かった。
いや、「完全無欠じゃん!」と思っていたら、彼のことをあまり良く思わない人物が出てきて、その人の目から見たツマキさんは確かにちょっとイヤな感じだったりもするんですが。
と思ったら、あんな事があったりこんな事があったり……いやー、読み応えあったなぁ(笑)。
色々な事があるわりには、気付いたらツマキさんが年を取っていて、実際頁数は結構あるので、時間が経っているのはわかるのですが、あっという間だったんです。
「色々あったけど、あっという間だった!」って、まるで面白い大河ドラマでも観た後のよう。「色々あったけど、もう頼朝亡くなっちゃったよ!」みたいな?
って、またなんか混同しちゃいました、すみません。
「無茶苦茶カッコいいツマキさん」は、私が知らなかっただけで、実は無茶苦茶有名な方でした。
日本橋を手掛けた建築家だったのです。
カバーをかけて読んでいたので、表紙の事なんて途中すっかり忘れていたのですが、あの麒麟はやっぱり日本橋だったんですねー。
実は私、かつて当ブログであの麒麟について熱く語った事があるのです。当時の記録はこちら。
2004年の記事なので、なんと18年前(汗)。
そして、先日羽生結弦展を日本橋高島屋に観に行った話を当ブログに書きましたが、その際にも日本橋の麒麟に見とれ、写真を撮っていたのでした。
なんて、凛々しいのでしょう。
(18年前より、空が見えるようになってます!)
というわけで、『剛心』、あながち興味のない話でもなかったのでした♪
『櫛挽道守』や『光炎の人』、その他の短編を読んでも時々感じるのですが、木内さんって、「仕事」にとても興味や関心、敬意を持っているように思います。「仕事」の描き方に情熱というか愛情を感じます。「仕事」をただの「お金を稼ぐ手段」みたいには考えてなさそう。
未読なのですが『東京の仕事場』という本も出しているし、あらゆる「仕事」に興味をお持ちなのかも。今後も私とは無縁の仕事に光を当てた興味深い小説を書いてくれそうで、楽しみです。
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