A REALITY TOUR(初日)
Cuts Like A Bowieより転載
デヴィッド・ボウイ、8年ぶりの日本公演初日です。
8年……長かったような短かったような。10歳の子供は18歳になってしまうんですね。「生でボウイを観るのは初めて」という人も、結構いるのかも知れないなぁ。
そんな感慨を抱きつつ、武道館へ向かいました。
田安門をくぐる頃にはもう心臓はバクバク。
「どうしよう」、そんな言葉が立て続けに口をつきます。
「どうしよう」ってどうしようも無いのですが、なんだか言わずにはいられない。自分で発している言葉の意味が自分でわかりません。喜び、緊張、一抹の不安……様々な感情がごちゃまぜになって、自然に出て来てしまう言葉でした。
「アリーナ席の方は左へお進み下さい」との入口の係員さんの声に思わず顔がほころぶ私。そう、今回は夢のアリーナ席でした。武道館のアリーナ席って実は初めてです。アリーナといってもNブロックなのでそれ程は期待していませんでしたが、席に着いてみると案外ステージが近い!! ブロックの中では3列目な上に、中央寄りだったので意外と良いポジションなのです。調子に乗って「武道館って狭いね~」などと豪語し、狂喜乱舞。胸の鼓動は早くなる一方でした。
スクリーンに何か映し出された……と思ったら、渋い声が聞こえました。「えっ、今のボウイの声!?」と思わず興奮。観客も総立ちです。映し出されたのは演奏しているメンバーのアニメ映像でした。ボウイと思しきアニメ・キャラクターはハーモニカを吹いています。髪の色は赤く、『Low』時代を彷彿とさせるような感じ。程なくステージにも1人また1人とメンバーが現れました。そして最後に実物のボウイが。悲鳴を上げてしまう私。で、皆が立ってしまうと、思った程ボウイは見えませんでした。よく見たくて思わず飛び跳ねてしまいました、すみません>後ろの方。
1曲目は"Rebel Rebel"。
昨年、映画『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』で印象的な使われ方をしていたので、「ひょっとしてライブでやったりして。オープニングに合いそう」なんて漠然と思っていましたが、実現しちゃいました。
調べてみると、今回のツアーではこの曲が1曲目になっている事が多いですね。
そういえば、Sound+Visionツアー後の例の「過去の曲はもうやらないよ発言」の時に名指しで挙げられていたのがこの曲でした。「こういう曲をやるのに最近は違和感を感じる」といった旨の発言をしていたっけ。幸い時が経つにつれて、徐々に過去の名曲群もやってくれるようにはなりましたが、この曲は前回の来日公演時には取り上げられず、「他の曲はやっても、さすがにこれは演らないか」なんて思ったものでしたが、とうとうやっちゃった。もうこれで恐いものナシです。どんな曲だって、やってくれそうな気がする♪ この曲自体にはそれ程思い入れはありませんが、ライブで聴くと気持ちが高揚する曲ではあります。
嬉しかったのは4曲目の"All The Young Dudes"。
なんとサビの部分では多くのファンが左右に手を振ったのです。この曲は8年前も演奏してくれたけれど、その時はこんな状態にはならなかったような気が。なんだか会場が温かい雰囲気に包まれた気がしてちょっぴり感動してしまいました。ボウイのコンサートでこんな光景を目にする事になるとは思わなかったなぁ……。
そんなファンの好反応に味をしめたのか(?)、続く"China Girl"の頭をファンに歌わせようとするボウイ。……っていうか、あれは何だったんだろう? ただ単に出だしを間違ったのでしょうか? 80年代物好きな私は口の中で小さく♪I could escape this feeling...なんて歌ってましたが、80年代嫌いな人も多そうなので、あれで合唱になると思っていたのだとしたら、「ちょっと違うと思うよ」と教えてあげたい。まさか、日本と中国を間違えたわけじゃないよね。うーん、どういうつもりだったのでしょう?
続いて"Never Get Old"。
『Reality』の曲ではありますが、最近ちょっとやっていなかった模様。同行者がライブ前に「"Never Get Old"好きなのに、なんでやらなくなっちゃったんだろう」と残念がっていたので、「良かったね!!」と声をかけたのですが、もう彼女の目にはボウイしか映っていないようでした。多分私の言葉、聞こえてなかったと思う(笑)。
"The Man Who Sold The World"は反応に困りました。なんか切ない曲というイメージが私にはあるのですが、前の方の一部のお客さんがノリノリなのです。「あれ、私も乗った方が良いのかしらん?」と思ったのですが、どうしてもそういう気分にはなれず、しんみりと聴いていました。白けてたわけじゃ決して決してないのーっ!!
それにしても、あの歌詞の意味、日本語訳を読んでもよくわかりません。まぁ、そういう類の曲他にも沢山あるのですが。
とかなんとかいいつつ、"Hallo Spaceboy"では私もノリノリ。ボウイもノリノリ。
ステージから突き出した板(ミニ花道のような物)に駆け上がっての熱唱です。これはライブで聴くと気持ち良いですね~。燃える。
リーヴスのギターが印象的だと思っていましたが、彼でなくても特に違和感は感じませんでした。
そして "Sunday"~"Heathen (The Rays) "とアルバム『Heathen』からの曲が続きました。
実は私、『Heathen』が出た時、「こんな落ち着いたアルバム出しちゃって、つまんないの~」なんてボウイ・ファンにあるまじき事を思っていました。そしてこれは、ボウイのアルバムの中でも3本の指に入る位「聴き返す事の無いアルバム」と化してしまっていました。しかし、海外のライブの模様をテレビで観て「あ、『Heathen』の曲って、ライブ映えするんだ」と見直し、そしてその思いは今回のライブでさらに強まりました。素晴らしいよ、『Heathen』。あのアルバムの魅力を再認識出来て本当に嬉しい。気付くのが遅すぎてごめんなさい。
"Under Pressure"は前回同様、ゲイルさんのヴォーカルが冴えまくり。フレディ追悼コンサートの時のアニー・レノックスより数段素晴らしいと感じるのは私だけではないでしょう。いい声してます。
そして、私にとってのこの日のハイライトは"Life On Mars?"。
本当に素晴らしかったです。ボウイの歌声に聴き惚れました。オリジナルと比べると、アレンジはそれ程変わっていないのですが、歌い方がまるっきり違っていました。別物のように感じられました。お腹から声を出すような朗々とした歌い方は本格派の味わい。その上手さに唸りました。
実は私はボウイに歌の上手さなんて、それ程求めていません。ボウイに限らず、「ヴォーカリストはうまくなくっちゃ」なんて事もあまり思っていないのです。音痴はさすがにイヤですが、少し位不安定でも声量が足りなくても、それを補う工夫や別の魅力があれば良しとしています。逆に歌の上手さをひけらかすような、押しつけがましいタイプのヴォーカリストの方が苦手だったりします。だからオリジナルの"Life On Mars?"は決して嫌いではない、むしろ大好きなんです。にも関わらず、今回の"Life On Mars?"にも、ほんっっと心揺さぶられてしまって、それが嬉しかった。オリジナルに思い入れがあり過ぎて、ニュアンスの違うカバーなどに不快感を憶える事も多々ある私、そしてSound+Visionツアーの時は「え~、CDと違うじゃん、ちぇっ」なんて思った私なのに、今回の"Life On Mars?"にあんなに感動出来るとは……。
オリジナルの"Life On Mars?"には若さ故の「何か」がありました。お世辞にも上手いとは言えない奇妙な歌声も魅力的でした。「若さ」というのはただそれだけで何物にも代え難い程の力があるような気がします。その絶大な武器を失ったアーティストが厳しいショー・ビジネスの世界で長く戦って行くのは大変な事でしょう。歌唱力を始めとした新たな武器を次々身に付けたボウイだからこそ、今迄逞しく第一線で活躍し続ける事が出来たのだろうなぁ、と実感しました。もちろんジギー時代から既にあった抜群の表現力と天性のセンスも大きいとは思いますが。
18曲目からは3曲連続で『Low』からのナンバー。
"A New Career In A New Town"ではハーモニカを披露してくれて、まさに前述したオープニングのアニメのような雰囲気でした。
"Sound And Vision"のサックスが生でなかったのはサックス・マニアな私としてはちょっと残念。会場で買ったプログラムを開くといきなり右のような写真も載っていた事だし、またサックス吹くボウイも観たかったなぁ(特に→のようなバリトン)。
1部のラストは"Heroes"。
この曲の主題は"We can be Heroes / Just for one day"だと思うのですが、前者に重きを置くか後者に重きを置くかでかなりニュアンスが変わってくるような気がします。この曲をカバーしている人も多いのですが、明るく歌う人と重く歌う人と2パターンいますよね。「英雄になれる=明るい」「でもたった1日だけ=暗い」という感じ。今回は明るいアレンジでした。ニューヨークでのテロ事件後、亡くなった消防士にこの歌を捧げるような歌い方をする人がいましたが、それを意識して対抗して敢えて明るいアレンジにしてしまっているという想像は的はずれでしょうか? この曲が多くの人に愛され認知されるのは嬉しいけれど、テロと結び付け過ぎるのはあまり歓迎したくないです。これはニューヨーク限定の歌じゃないし。限定が許される地域があるとすれば、やはりベルリンだけではないかと。
アンコールは『Ziggy Stardust』から3曲連続。素晴らしかったです。特にラストの"Suffragette City"と"Ziggy Stardust"!! これには悲鳴上げちゃった。さらにアンコールして欲しかったけれど、あれ以上の終わり方ってないような気もします。
いやぁ、それにしても、素晴らしいコンサートでした。気になった点といえば、ミニ花道が左右に1つずつあったのに右側しか使わなかった事。そして『Reality』の中で私が一番好きな曲"Bring Me The Disco King"をやらなかった事。しかし、この2点が翌日……ふふふ……(謎の含み笑い)。
【セット・リスト】
太字=両日やった物
①=初日のみやった物 ②=2日目のみやった物で①の代わりと思われる物
☆=2日目のサービス(?)と思われる物
※The Loneliest Guyは両日やっていました
結構違う曲、やってくれたんですよね~♪
Rebel Rebel
Hang On To Yourself☆
New Killer Star
①Fame ②Fashion
Cactus
All The Young Dudes
China Girl
①Never Get Old ②Reality
①The Loneliest Guy※ ②5:15 The Angels Have Gone
The Man Who Sold The World
Hallo Spaceboy
Sunday
Heathen (The Rays)
Under Pressure
①Life On Mars? ②Slip Away
Looking For Water
Quicksand
①Days ②The Loneliest Guy※
①Sound And Vision ②Afraid
Be My Wife
A New Career In A New Town
Ashes To Ashes
I'm Afraid of Americans
"Heroes"
(Encore)
Bring Me The Disco King ☆
Five Years
Fall Dog Bombs The Moon☆
Suffragette City
Ziggy Stardust
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